従業員による背任行為とは|具体例・調査方法・懲戒処分のポイントを解説

この記事は、従業員による背任行為について詳しく解説します。 背任行為は、企業にとって深刻な問題であり、適切な対処が求められます。 具体的な事例や調査方法、懲戒処分のポイントを理解することで、企業はリスクを軽減し、再発防止に向けた体制を整えることができます。

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従業員による背任行為とは

背任行為とは、従業員が会社の利益を害し、自己または第三者の利益を図る不正行為を指します。 これは、企業の信頼を損なうだけでなく、経済的な損失をもたらす可能性があります。 背任行為は、従業員が自らの職務に反して行動することから発生し、企業の運営に深刻な影響を与えることがあります。

会社の利益を害し第三者や自己を利する不正行為

背任行為は、従業員が会社の利益を損なう意図的な行動を取ることから始まります。 例えば、従業員が自社の情報を外部に漏らし、競合他社に利益をもたらす場合などが該当します。 これにより、企業は市場での競争力を失い、経済的な損失を被ることになります。

業務上横領とは異なるが同様に重大な不法行為

背任行為は、業務上横領とは異なるものの、同様に重大な不法行為です。 横領は、従業員が会社の資産を不正に持ち去る行為ですが、背任行為は、従業員が自らの職務を利用して会社に損害を与える行為です。 どちらも企業にとっては深刻な問題であり、適切な対処が必要です。

刑法上の「背任罪」に該当する場合もある(「任務違背」と「損害発生」が要件)

背任行為は、刑法上の「背任罪」に該当する場合があります。背任罪の成立には、従業員が「任務に背く行為」を行い、「会社に財産上の損害を発生させたこと」が必要です。 これは、従業員が自己または第三者の利益を図るために、会社に損害を与える行為を指します。 これにより、従業員は法的な責任を問われることになります。

背任行為に該当する具体例

背任行為にはさまざまな具体例があります。 これらの行為は、企業の信頼を損ない、経済的な損失を引き起こす可能性があります。 以下に、背任行為に該当する具体的な例を挙げます。

会社の利益を損なう意図的な判断や取引

従業員が意図的に会社の利益を損なう判断を下すことがあります。 例えば、利益の少ない取引を選択することで、会社に損害を与える行為が該当します。 このような行為は、従業員の職務に対する信頼を損なうだけでなく、企業全体の業績にも悪影響を及ぼします。

キックバック・利益供与などの不正取引

キックバックや利益供与は、背任行為の一例です。 従業員が取引先から不正に利益を受け取ることで、会社の利益を損なう行為です。 このような取引は、企業の信頼性を低下させ、法的な問題を引き起こす可能性があります。

取引先との癒着や私的利益のための契約行為

従業員が取引先と癒着し、私的な利益を得るために契約を結ぶことも背任行為に該当します。 このような行為は、企業の利益を損なうだけでなく、他の従業員や株主に対しても不公平な影響を与えることになります。

発覚時の会社の初期対応

背任行為が発覚した際、企業は迅速かつ適切な初期対応を行う必要があります。 初期対応が不十分であると、事態が悪化する可能性があります。 以下に、発覚時の初期対応のポイントを示します。

事実確認と証拠保全を最優先で行う

背任行為が疑われる場合、まずは事実確認を行い、証拠を保全することが重要です。 証拠が不十分な場合、後の調査や法的手続きにおいて不利になる可能性があります。 企業は、迅速に行動し、証拠を確保する必要があります。

ログ・書類・取引データなど客観的資料を確保(特に電子データの改ざん防止措置)

証拠保全の一環として、ログや書類、取引データなどの客観的資料を確保することが求められます。特にPCなどの電子データについては、後の証拠力を保つため、改ざん防止措置(デジタルフォレンジック)を講じることが重要です。 企業は、これらの資料を適切に管理し、必要に応じて利用できるようにしておくことが重要です。

感情的な対処や不適切な追及は避ける

背任行為が発覚した際、感情的な対処や不適切な追及は避けるべきです。 冷静に事実を確認し、適切な手続きを踏むことが重要です。 感情的な対応は、従業員との信頼関係を損なうだけでなく、企業の評判にも悪影響を及ぼす可能性があります。

内部調査の進め方

背任行為が発覚した場合、内部調査を適切に進めることが重要です。 調査の進め方によっては、企業の信頼性や法的な立場に大きな影響を与えることがあります。 以下に、内部調査の進め方のポイントを示します。

社内調査チームまたは専門家と連携する

内部調査を行う際には、社内調査チームを設置するか、外部の専門家と連携することが推奨されます。 専門家の視点を取り入れることで、客観的かつ効果的な調査が可能になります。 また、社内のメンバーだけでなく、外部の専門家を交えることで、透明性を確保することができます。

従業員本人へのヒアリングは複数名で対応(ICレコーダー等による記録も必須)

従業員本人へのヒアリングを行う際は、必ず複数名で対応することが重要です。また、ヒアリング内容の正確性を担保し、後の紛争を防ぐため、ICレコーダー等による記録も必須です。 これにより、ヒアリングの公正性が保たれ、従業員が安心して話せる環境を作ることができます。 また、複数名でのヒアリングは、情報の正確性を高める効果もあります。

第三者委員会など客観性の担保を検討する

調査の客観性を担保するために、第三者委員会の設置を検討することも一つの方法です。 外部の専門家や法律の専門家を含む委員会を設置することで、調査の透明性が高まり、結果に対する信頼性が向上します。 これにより、企業の評判を守ることができます。

従業員への処分と法的手続き

背任行為が確認された場合、従業員に対する処分や法的手続きを適切に行うことが求められます。 これにより、企業の信頼性を保ち、再発防止につなげることができます。 以下に、処分と法的手続きのポイントを示します。

就業規則に基づく懲戒処分(懲戒解雇の可能性)

背任行為が確認された場合、就業規則に基づく懲戒処分を行うことが必要です。 懲戒処分には、減給や出勤停止、懲戒解雇などがあります。 特に、懲戒解雇は重大な処分であり、企業はその理由を明確にし、適切な手続きを踏むことが求められます。

損害額に応じて損害賠償請求が可能(全額の請求が困難な場合もある)

背任行為によって企業が被った損害に対して、従業員に損害賠償請求を行うことが可能です。ただし、雇用関係の性質上、裁判所により損害賠償額が限定(信義則上の減額)される可能性がある点に注意が必要です。 損害額を正確に算定し、法的手続きを進めることで、企業は損失を回収することができます。 これにより、企業の経済的な損失を軽減することができます。

悪質な場合は刑法の背任罪で告訴することもできる

背任行為が特に悪質な場合、刑法の背任罪で告訴することも選択肢の一つです。 これにより、従業員は法的な責任を問われることになります。 企業は、告訴を行う際には十分な証拠を集め、法的手続きを適切に進めることが重要です。

企業が負うリスクと注意点

背任行為に対する適切な対応を怠ると、企業はさまざまなリスクを負うことになります。 これらのリスクを理解し、注意点を把握することで、企業はより効果的な対策を講じることができます。 以下に、企業が負うリスクと注意点を示します。

背任行為を放置すると企業の経営損失が拡大する

背任行為を放置すると、企業の経営損失が拡大する可能性があります。 従業員の不正行為が続くことで、企業の信頼性が低下し、顧客や取引先との関係にも悪影響を及ぼすことになります。 早期の対応が求められます。

誤った判断は不当解雇や名誉毀損のリスクがある

背任行為に対する誤った判断は、不当解雇や名誉毀損のリスクを伴います。 適切な手続きを踏まずに従業員を処分すると、企業は法的な責任を問われることになります。 慎重な判断が必要です。

厳密な証拠と手続きが必要不可欠

背任行為に対する対応には、厳密な証拠と手続きが不可欠です。 証拠が不十分な場合、法的手続きが不利になる可能性があります。 企業は、証拠を確保し、適切な手続きを踏むことが重要です。

再発防止のための体制整備

背任行為を防ぐためには、再発防止のための体制を整えることが重要です。 企業は、内部のルールや監査体制を見直し、従業員への教育を徹底する必要があります。 以下に、再発防止のための体制整備のポイントを示します。

権限管理と承認フローの見直し

権限管理と承認フローを見直すことで、背任行為のリスクを軽減することができます。 従業員が不正行為を行う余地を減らすために、権限を明確にし、承認プロセスを厳格にすることが求められます。

取引や経費の監査体制を強化する

取引や経費の監査体制を強化することで、背任行為を未然に防ぐことができます。 定期的な監査を実施し、異常な取引や経費を早期に発見する体制を整えることが重要です。

従業員へのコンプライアンス教育の徹底

従業員へのコンプライアンス教育を徹底することで、背任行為のリスクを軽減することができます。 企業は、法令遵守の重要性を従業員に理解させ、倫理的な行動を促す教育プログラムを実施することが求められます。

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この記事を書いた人

岩本浩一社会保険労務士・採用定着士
岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員

採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。

特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。

地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。