介護休業中の社会保険はどうなる?保険料や手続きをわかりやすく解説

この記事は、介護が必要になった家族を持つ労働者とその雇用主向けに、介護休業を取得した際の社会保険(健康保険・厚生年金など)の取り扱いや保険料、手続きの流れをわかりやすく整理した解説記事です。
制度の要点や給付金・免除の有無、企業が行うべき確認事項や実務上の注意点まで実務で役立つ情報を中心にまとめています。

介護休業中の社会保険はどうなるのか

結論から言うと、介護休業を取得しても原則として健康保険と厚生年金の被保険者資格は継続されます。
ただし、休業中の給与の有無や支払われる金額により保険料の取り扱いや給与天引きの方法が変わるため、事前に会社と本人で確認しておくことが重要です。

結論

介護休業中は被保険者資格が基本的に維持されますので、受診や年金資格に影響が出ない点が安心材料です。
しかし、介護休業中の給与がゼロとなるケースでも保険料の免除制度は原則存在しないため、保険料負担の発生や支払方法については労使で合意をとる必要があります。

社会保険の加入は継続する

被保険者としての資格は雇用関係が続いている限り原則として継続しますので、会社が加入している健康保険組合や厚生年金の被保険者のまま扱われます。
ただし、日雇い等の例外や雇用形態による制約があるため、該当者は就業規則や雇用契約を確認してください。

保険料の取扱い

給与が支払われる場合は通常通り給与から保険料を天引きして事業主と折半で納付します。
無給となる場合でも、保険料の事業主負担分や本人負担分の取扱いを就業規則でどう定めているかで実務対応が変わるため、休業前に手続きを決めておく方が混乱を避けられます。

介護休業とは

介護休業とは、要介護状態にある家族の介護を理由に労働者が一定期間の休業を取得できる法的制度です。
育児・介護休業法に基づき、対象家族や取得条件、期間が定められており、制度の趣旨は仕事と介護の両立を支援することにあります。

介護休業制度の概要

介護休業は対象家族1人につき通算93日を限度として、3回まで分割して取得可能です。
事業主は申出を拒めない原則があり、休業中の職位や待遇の保障、復職のルールなども法令で定められていますので、制度の概要を把握しておくことが大切です。

対象となる家族

対象となるのは配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫および配偶者の父母などで、要介護状態(原則として常時介護を必要とする状態)が要件となります。
家族の範囲や介護の程度については具体的な判断基準があるため、必要に応じて医師の意見書などの確認が求められる場合があります。

  • 対象家族の範囲:配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母など
  • 要介護の判断:常時介護が必要な状態が基本的な要件
  • 証明書類:企業内ルールで医師の意見書等を求める場合がある

取得できる日数

介護休業は対象家族1人につき通算93日が上限で、これを3回まで分割して取得できます。
例えば、最初に30日、次に30日、最後に33日といった分割が可能で、取得方法は労働者と事業主間の協議で決めますが、法定の上限を超えることはできません。

介護休業中の社会保険料

介護休業中における社会保険料の負担は、健康保険・厚生年金ともに原則として加入は継続する一方で、保険料の計算や徴収方法に注意が必要です。
給与が支払われるか否かや支払額に応じて会社がどう処理するかを事前に決めておかないと、後のトラブルにつながる可能性があります。

健康保険料

健康保険料は原則として標準報酬月額に基づき算定されますが、休業中に支払われる給与が大幅に減る場合も標準報酬の見直し(改定)が必要になることがあります。
具体的な手続きは健康保険組合や協会けんぽに確認し、必要に応じて報酬月額の届出を行うことが求められます。

厚生年金保険料

厚生年金保険料も標準報酬に基づいて計算されますので、休業中の報酬が変動する際は標準報酬の算定や改定ルールに従って処理をします。
年金の被保険者期間自体は原則継続するため、将来の年金受給資格に悪影響を及ぼさないことが多いですが、納付漏れがないよう注意が必要です。

項目健康保険料厚生年金保険料
加入状態原則継続原則継続
算定基準標準報酬月額標準報酬月額
報酬減少時の対応報酬改定の可能性あり報酬改定の可能性あり

会社と本人の負担

保険料は通常、事業主と被保険者で折半して負担しますが、休業中に給与が支払われない場合でも保険料の免除制度がない以上、会社が給与相当分を補填するか、被保険者が個別に負担するかなどの運用ルールを就業規則で定めておくことが望ましいです。

保険料免除はあるのか

介護休業に関しては、育児休業のように社会保険料が法的に免除される制度は原則として設けられていません。
したがって、休業中に保険料の納付猶予や免除を希望する場合は、個別の事情に応じて健康保険組合や年金事務所へ相談する必要があります。

育児休業との違い

育児休業には育児休業等保険料免除制度などの特例がある場合がありますが、介護休業では同様の広範な免除措置は基本的に適用されません。
そのため、育児と介護で制度上の扱いが異なる点に注意が必要です。

介護休業は免除制度がない

介護休業中に社会保険料の法定免除があるわけではないため、給与が減っても被保険者資格は維持される一方で保険料は発生します。
企業側が特別な取扱いをする場合は就業規則や労使協定で定め、従業員へ周知しておくことが重要です。

給与が支給されない場合の取扱い

給与が全く支給されない場合でも、保険料の納付義務が残る可能性があるため、会社と労働者で負担方法を協議して決めておく必要があります。
実務上は会社が一時的に負担して後日精算するケースや、被保険者が個別に納付するケースなどが見られます。

介護休業給付金との関係

介護休業給付金は雇用保険の給付であり、介護休業中の所得を補填する目的で支給される制度です。
社会保険料とは別の制度であるため、給付金の受給有無や額が保険料の免除を自動的に意味するわけではありませんので両制度の違いを理解しておくことが必要です。

支給要件

介護休業給付金を受けるには、休業開始前の一定期間に雇用保険の被保険者期間があることや、介護休業が法定の要件を満たしていることが必要です。
詳細な被保険者期間の要件や申請手続きはハローワークで確認できます。

支給額

支給額は原則として休業開始前の賃金を基準に算出される日額の一定割合で決まり、上限や支給率は法令で定められています。
給付金は給与の全部を補填するものではない点に注意が必要で、実際の手取りと給付金の差額を踏まえた生活設計が必要です。

社会保険料との違い

介護休業給付金は雇用保険からの給付であり社会保険料とは別枠です。
給付金を受け取った場合でもその金額に応じて健康保険や年金の算定対象になるかどうかや保険料納付に関する扱いは別個に判断されますので、給付を受ける際には社会保険の取扱いも確認してください。

企業が行う手続き

企業は介護休業の申出を受けたら、労働者と協議して休業の開始日や期間、給与支払の有無、社会保険料の取り扱いなどを文書で確認することが望まれます。
社内手続きとしては就業規則の適用、給与計算部門と社会保険担当による実務対応が必要です。

介護休業の申出を受ける

申出を受けたらまず申請書類の確認と家族の要介護状態の確認ルールに基づく書類の有無をチェックします。
企業側は申出を不当に拒否できないため、受理手順や説明責任を果たすことでトラブルを未然に防ぐことができます。

給与・社会保険を確認する

休業期間中の給与支給の有無や支給額、社会保険料の天引き方法について給与担当と社会保険担当が連携して処理方法を決めます。
必要に応じて健康保険組合や年金事務所へ相談し、標準報酬に関する届出や算定を行うことが重要です。

雇用保険の手続きを行う

介護休業給付金を申請する場合は雇用保険の手続きをハローワークで実施します。
企業は休業の事実や休業期間の証明、賃金台帳等の書類準備を行い、従業員が給付をスムーズに受けられるよう支援する義務があります。

企業が注意したいポイント

企業側は介護休業に関する就業規則の整備、給与計算や社会保険料の取扱いのルール化、従業員への丁寧な説明と支援が重要です。
実務上の不備は長期の労使トラブルや法的な問題に発展することがあるため、事前準備と周知が欠かせません。

保険料徴収方法を決める

休業中の保険料をどう徴収するかは事業主が就業規則や労使協定で方針を示しておくことが望ましく、給与から天引きできない場合の代替案や事業主が一時負担する場合の精算方法などを明確にしておくべきです。

就業規則を確認する

就業規則に介護休業中の給与、社会保険料の取り扱いや復職手続きについて明確な規定があるか確認しましょう。
規則の未整備は運用上の混乱を招きやすく、労使間の認識ズレを防ぐためにも文書化されたルール作りが重要です。

従業員へ説明する

介護休業の申請前に対象者へ制度の概要や給付金、社会保険料の負担、通知書類の提出方法などを丁寧に説明し、不明点を解消しておくことが大切です。
事前説明が不十分だと申請後の手続きに時間がかかり、従業員の不安を招く恐れがあります。

よくある質問

ここでは企業と従業員から多く問い合わせのある点をQ&A形式で整理します。
無給の場合の保険料負担、休業後の退職時の扱い、賞与が支給された際の社会保険の取り扱いなど、実務で直面しやすいケースに対する基本的な考え方を示します。

無給でも社会保険料はかかるか

無給であっても社会保険料免除の一般的な制度は介護休業には適用されないため、保険料が発生する可能性があります。
実際の負担方法については会社が一時的に負担するか、従業員が個別に納付するかなどの運用を確認してください。

介護休業中に退職したらどうなるか

休業中に退職した場合は雇用関係が終了するため、被保険者資格は退職日で消滅します。
退職時点での保険料納付や離職票の発行、年金や健康保険の資格喪失手続きなどを速やかに行う必要がありますので、双方で手続きの確認を行いましょう。

賞与が支給された場合はどうなるか

賞与が支給された場合、通常は賞与にかかる社会保険料が発生します。
休業期間中に支給された賞与も算定対象となるため、給与計算担当は賞与支払時の保険料算定を適切に行い、納付手続きを実施してください。

関連する制度との違い

介護休業は介護休暇、育児休業、傷病手当金といった他の制度と似た要素を持ちますが、目的や給付の有無、保険料の扱いが異なります。
企業や従業員は目的に応じてどの制度を使うか選択し、それぞれの要件と手続きの違いを理解しておく必要があります。

育児休業との違い

育児休業は子育てを目的とした制度で、一部の条件下で社会保険料の免除措置がある場合がありますが、介護休業は同様の免除措置が基本的に適用されません。
育児と介護で法的保障や給付の仕組みが異なる点を把握しておきましょう。

項目育児休業介護休業
免除制度一定の免除措置が適用される場合あり一般に免除措置はない
給付金育児休業給付金あり介護休業給付金(雇用保険)あり
取得期間対象年齢等により長期取得可対象家族1人につき通算93日

介護休暇との違い

介護休暇は短期間の休暇取得を目的とし、年間の取得可能日数が限られる一方で介護休業は長期的な休業が可能です。
用途や期間、手続きの簡便さが異なるため、短期対応なら介護休暇、長期の介護が必要なら介護休業を選ぶのが一般的です。

傷病手当金との違い

傷病手当金は労働者本人が病気や負傷で働けない場合に健康保険から支給される制度であり、介護休業は家族の介護を理由とする休業であるため趣旨が異なります。
支給要件や受給手続きが全く異なる点に注意が必要です。

社労士が企業へ提案できること

社会保険労務士は介護休業制度の整備や個別事例への対応、社会保険・雇用保険の手続き支援、従業員向け説明資料の作成など、企業が法令遵守しつつ実務運用できるよう支援できます。
社労士のアドバイスを受けることで労使双方の負担が減り制度運用が円滑になります。

介護休業制度を整備する

社労士は就業規則への規定追加や労使協定の作成を支援し、休業中の給与・保険料の取り扱いや復職ルールを明確化する提案ができます。
事前にルールを整備しておくことで、個別事案発生時の対応が迅速かつ公平になります。

社会保険手続きを支援する

社労士は健康保険組合や年金事務所、ハローワークへの届出や申請書類の準備を代行でき、保険料算定の相談や給付金申請のサポートを行います。
専門家の支援は誤申請や手続き遅延を防ぐうえで有効です。

仕事と介護の両立支援を行う

勤務形態の柔軟化や時短勤務制度、在宅勤務などの制度設計支援を通じて、介護と仕事の両立策を提案できます。
企業の実情に合わせた運用ルールを整備することで、従業員の離職防止や生産性維持につながります。

まとめ

まとめると、介護休業中は原則として健康保険と厚生年金の資格が維持されますが、介護休業に伴う法定の保険料免除は基本的にありません。
企業と従業員は休業前に保険料負担や給与支払の取扱い、必要な手続きを確認し合意しておくことが重要です。

保険料負担や手続きを事前に確認しよう

実務上は、就業規則の整備や事前説明、社内の窓口整備がトラブルを防ぎます。
介護休業給付金の申請や社会保険の算定方法など不明点がある場合は早めに社労士や年金機関、ハローワークに相談して適切に対応することをおすすめします。

この記事を書いた人

岩本浩一社会保険労務士・採用定着士
岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員

採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。

特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。

地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。