秘密保持誓約書とは何か?企業が必ず押さえるべき内容と運用ポイント

この記事は、企業の経営者や人事担当者、法務担当者を対象に、秘密保持誓約書の重要性や内容、運用方法について解説します。
秘密保持誓約書は、企業の機密情報を守るための重要な契約文書であり、適切に運用することで情報漏洩のリスクを軽減できます。
この記事を通じて、秘密保持誓約書の基本的な理解を深め、実務に役立てていただければ幸いです。

秘密保持誓約書とは

秘密保持誓約書(NDA:Non-Disclosure Agreement)は、企業が従業員や取引先に対して、業務上知り得た機密情報を外部に漏らさないことを誓約させるための文書です。
この契約文書は、企業の競争力を維持するために不可欠であり、情報漏洩が発生した場合のリスクを軽減する役割を果たします。
特に、企業の成長に伴い、取り扱う情報の量や重要性が増すため、秘密保持誓約書の重要性はますます高まっています。

企業情報を外部に漏らさないための重要な契約文書

企業が持つ情報は、競争優位性を保つための重要な資産です。
秘密保持誓約書は、従業員や取引先がその情報を外部に漏らさないことを法的に約束させるための手段です。
この契約があることで、企業は情報漏洩のリスクを軽減し、安心して業務を進めることができます。
特に、顧客情報や営業戦略など、企業の根幹に関わる情報を守るためには、秘密保持誓約書が不可欠です。

退職後も義務が継続するのが一般的

秘密保持誓約書の特徴の一つは、退職後もその義務が継続する点です。
多くの企業では、従業員が退職した後も、在職中に知り得た機密情報を漏洩しないことを誓約させます。
これにより、退職後に競合他社に転職した場合でも、企業の機密情報が不正に利用されるリスクを低減できます。
このような継続的な義務は、企業の情報保護において非常に重要です。

業務上知り得た情報を保護するためのリスク管理ツール

秘密保持誓約書は、単なる契約文書ではなく、企業のリスク管理ツールとしても機能します。
情報漏洩が発生した場合、企業は法的手段を講じることができ、損害賠償を請求することが可能です。また、一定の要件を満たす情報は不正競争防止法による「営業秘密」として保護され、刑事罰を含む厳しい罰則の対象となります。
このように、秘密保持誓約書は、企業が持つ情報を守るための重要な防衛策となります。
適切に運用することで、企業の信頼性を高め、顧客との関係を強化することにもつながります。

秘密保持誓約書の対象となる情報

秘密保持誓約書で保護される情報は多岐にわたりますが、主に以下のような情報が対象となります。
これらの情報は、企業の競争力を維持するために重要であり、適切に管理される必要があります。
具体的には、顧客情報や営業戦略、技術情報などが含まれます。

顧客情報・価格情報・営業戦略などの営業秘密

顧客情報や価格情報、営業戦略は、企業の競争力を左右する重要な情報です。
これらの情報が漏洩すると、競合他社に対して不利な状況を招く可能性があります。
そのため、秘密保持誓約書では、これらの情報を厳重に保護することが求められます。
特に、顧客情報は個人情報保護法にも関連するため、慎重な取り扱いが必要です。

人事情報・給与情報などの内部データ

人事情報や給与情報は、企業内部の機密情報として扱われます。
これらの情報が漏洩すると、従業員のプライバシーが侵害されるだけでなく、企業の信頼性にも影響を与えます。
秘密保持誓約書では、これらの内部データの取り扱いについても明確に規定することが重要です。
従業員が安心して働ける環境を提供するためにも、適切な管理が求められます。

技術情報・ノウハウなどの知的財産

技術情報やノウハウは、企業の競争力を支える重要な資産です。特に「営業秘密」(不正競争防止法)として保護されるためには、秘密として管理されていること(秘密管理性)が不可欠です。
これらの情報が漏洩すると、企業の技術的優位性が失われる可能性があります。
秘密保持誓約書では、これらの知的財産を保護するための具体的な取り決めが必要です。
特に、研究開発部門などでは、技術情報の管理が厳重に行われるべきです。

誓約書に盛り込むべき必須項目

秘密保持誓約書には、企業が守るべき重要な情報を明確にするための必須項目がいくつかあります。
これらの項目を盛り込むことで、誓約書の法的効力を高め、情報漏洩のリスクを軽減することができます。
具体的には、秘密情報の定義、取り扱い方法、退職後の義務などが含まれます。

秘密情報の定義と範囲

秘密保持誓約書では、まず秘密情報の定義を明確にすることが重要です。
何が秘密情報に該当するのかを具体的に示すことで、従業員が理解しやすくなります。「秘密」として扱われるべき情報の範囲を限定し、特定することが、法的効力を保つ上でも重要です。
また、秘密情報の範囲を明確にすることで、誓約書の適用範囲を限定し、法的なトラブルを避けることができます。
具体的な例を挙げると、顧客リストや製品開発の計画などが該当します。

情報の取り扱い方法と禁止事項

秘密保持誓約書には、情報の取り扱い方法や禁止事項を明記することが求められます。
具体的には、情報をどのように管理し、誰がアクセスできるのかを定める必要があります。
また、情報を外部に漏らさないための具体的な禁止事項も記載することで、従業員が遵守すべきルールを明確にします。
例えば、社外への情報提供やSNSでの情報発信を禁止することが考えられます。

退職後の義務・罰則・損害賠償の規定

退職後の義務についても、秘密保持誓約書に明記することが重要です。
退職後も秘密情報を漏洩しないことを誓約させることで、企業の情報を守ることができます。
さらに、違反した場合の罰則や損害賠償の規定も盛り込むことで、従業員に対する抑止力を高めることができます。
これにより、企業は法的手段を講じることができ、情報漏洩のリスクを軽減できます。

従業員に説明すべきポイント

秘密保持誓約書を効果的に運用するためには、従業員に対する適切な説明が不可欠です。
従業員が誓約書の内容を理解し、遵守することが求められます。
具体的には、日常業務での秘密情報の取り扱いや、違反した場合のリスクについて説明することが重要です。

日常業務で何が秘密情報に当たるのか明確化

従業員に対して、日常業務で何が秘密情報に該当するのかを明確にすることが重要です。
具体的な例を挙げて説明することで、従業員が意識的に情報を守ることができるようになります。
例えば、顧客の個人情報や営業戦略など、具体的な情報を示すことで、従業員の理解を深めることができます。

SNS投稿や外部相談も漏洩になり得る点を説明

SNSへの投稿や外部への相談が情報漏洩につながる可能性があることを従業員に説明することも重要です。
特に、業務に関する情報を無意識に漏らしてしまうケースが多いため、注意喚起が必要です。
具体的な事例を挙げて、どのような行動がリスクを伴うのかを理解させることが求められます。

違反した場合の企業・本人双方のリスク

秘密保持義務に違反した場合のリスクについても、従業員にしっかりと説明する必要があります。
企業にとっては、情報漏洩が発生すると信頼性が損なわれ、顧客を失う可能性があります。
また、従業員本人も法的な責任を問われることがあるため、双方にとってのリスクを理解させることが重要です。

秘密保持義務違反が発生した場合の対応

万が一、秘密保持義務に違反が発生した場合の対応策を事前に整備しておくことが重要です。
迅速かつ適切な対応が求められるため、企業はあらかじめ対応フローを策定しておくべきです。
具体的には、事実確認や証拠保全、従業員へのヒアリングなどが含まれます。

事実確認・証拠保全の徹底

秘密保持義務違反が疑われる場合、まずは事実確認を行うことが重要です。
証拠を保全することで、後の法的手続きに備えることができます。
具体的には、関連する文書やメールの保存、関係者へのヒアリングを行うことが求められます。
これにより、企業は適切な対応を行うための基盤を整えることができます。

従業員へのヒアリングと弁明の機会付与

従業員に対してヒアリングを行い、弁明の機会を与えることも重要です。
これにより、従業員の意見を聞くことができ、適切な判断を下すための材料を得ることができます。
また、従業員に対して公正な対応を行うことで、企業の信頼性を保つことができます。

損害賠償請求や懲戒処分の検討

秘密保持義務に違反した場合、損害賠償請求や懲戒処分を検討することが必要です。
企業は、違反によって生じた損害を回収するための法的手段を講じることができます。
また、従業員に対して懲戒処分を行うことで、再発防止につなげることが求められます。
このように、適切な対応を行うことで、企業の情報保護体制を強化することができます。

企業が整備しておくべき体制

秘密保持誓約書を効果的に運用するためには、企業内での体制整備が不可欠です。
誓約書の定期的な見直しや情報管理体制の構築、退職時の確認など、さまざまな取り組みが求められます。
これにより、企業は情報漏洩のリスクを軽減し、信頼性を高めることができます。

誓約書の定期的な見直しと更新

秘密保持誓約書は、定期的に見直し、更新することが重要です。
企業の状況や法律の変更に応じて、誓約書の内容を見直すことで、常に最新の状態を保つことができます。
これにより、従業員が遵守すべきルールを明確にし、情報漏洩のリスクを低減することができます。

アクセス権限管理など情報管理体制の構築

情報管理体制を整備することも重要です。
アクセス権限を適切に管理し、必要な情報にのみアクセスできるようにすることで、情報漏洩のリスクを軽減できます。
具体的には、情報の取り扱いに関するルールを策定し、従業員に対して教育を行うことが求められます。

退職時の誓約再確認と返却・削除の確認

退職時には、従業員に対して誓約の再確認を行うことが重要です。
また、退職時に企業の情報を返却させることや、デジタルデータの削除を確認することも必要です。
これにより、退職後の情報漏洩リスクを軽減し、企業の情報を守ることができます。

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この記事を書いた人

岩本浩一社会保険労務士・採用定着士
岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員

採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。

特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。

地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。