この記事は人事担当者や管理職、あるいは退職を検討している従業員を主な読者に想定しています。
退職面談の基本的な概要から実施のタイミング、進め方、具体的な質問例、聞いてはいけないこと、企業が注意すべきポイントや面談後に行うべき対策まで、実務で使える形で分かりやすく解説します。
退職面談とは
退職面談の概要
退職面談とは、従業員が退職を申し出た際に上司や人事担当者が行う面談のことです。
退職の意思表明を受けて、退職理由の確認や引き継ぎ、円満退職に向けた手続き確認、そして今後の組織改善に役立てるための情報収集を行う場として位置づけられます。
面談は対面やオンライン、書面でのアンケート形式など多様であり、実施者や目的によって進め方を柔軟に設計することが重要です。
退職面談の目的
退職面談の主な目的は、本音に近い退職理由を把握して組織の課題を明らかにすることです。
それにより人材流出の傾向を分析し、職場環境や評価制度、業務負荷などの改善策を検討して将来的な離職率低下につなげます。
また、退職者との円満な関係を維持し、必要な引き継ぎや法的手続きを円滑化するという実務的な目的もあります。
退職面談が注目される理由
近年、労働市場の流動化や人材確保の重要性が高まる中で、退職面談は組織を健全化するための重要な情報源として注目されています。
退職者の声は現場の問題点やマネジメントの課題を露呈することが多く、早期に改善策を講じるきっかけになるため経営層からも関心が高まっています。
さらにSNSや口コミによる風評リスクを抑える意味でも、退職者との関係構築は重要です。
退職面談を実施するメリット
退職理由を把握できる
退職面談を通じて直接的な退職理由や複合的な背景を聞き出すことで、表面的な原因だけでなく根本要因を把握することができます。
例えば業務量や評価制度、キャリアパスの不透明さ、人間関係、待遇面など複数の要因が絡むことが多く、それらを整理することで的確な対策を立てやすくなります。
定量的な集計と定性的なコメント両方を収集すると分析の精度が高まります。
職場環境の改善につながる
面談で明らかになった問題点を組織内で適切に共有し改善策を実行することで、残る社員の働きやすさを向上させることが可能です。
例えば上司のマネジメント方法、労働時間管理、教育体制の不備などが判明した場合、具体的な施策を設計して実行に移すことで職場環境を改善できます。
改善が見える形で実行されればエンゲージメント向上にも寄与します。
離職率の改善が期待できる
退職面談で得たデータを踏まえて制度改革や施策を実施すれば、同様の理由による離職を未然に防げる可能性があります。
例えば評価基準の見直しやキャリア支援の強化、メンタルヘルス対策の充実などがあげられ、これらは従業員の定着率向上に直結します。
定期的な分析とPDCAを回すことが離職率低下に効果的です。
退職面談を実施するタイミング
退職の申し出直後
退職の申し出直後に面談を行うことで、意思決定の背景が鮮明なうちに詳細を確認できます。
このタイミングは当事者の感情や出来事が記憶に残っているため、具体的な事例や改善提案を聞き出しやすい利点があります。
ただし当人の気持ちを尊重し、追及的にならない配慮が必要で、聞き取りはあくまで情報収集と今後の改善のためであることを明確に伝えましょう。
退職日までの期間
退職日までの期間に複数回に分けて面談やフォローを行うことで、初回に得られなかった本音や追加の情報を収集できます。
とくに引き継ぎの進捗確認や有用なナレッジの抽出、退職者が社内で感じている細かな課題の整理を行うのに適しています。
また適切な引き止めや配置転換の提案を検討する余地がある場合は、タイミングを見て対応を行うことが可能です。
最終出勤日
最終出勤日に最終確認として面談を実施することも有効です。
この場では引き継ぎ状況の確認、最終的な感想やアドバイスを聞き、必要書類の確認や退職後の連絡手段を明確にしておくことが重要です。
ただし最終日は感情が高ぶっていたり時間が限られる場合もあるため、事前にアポイントを取るなど配慮が必要です。
退職面談の流れ
事前準備を行う
面談前には目的を明確にし、質問項目や所要時間、担当者を決め、必要な管理職や人事の承認を得ておきます。
また退職者の業務履歴や過去の評価、勤怠記録、これまでの申告事項などを事前に確認しておくことで、面談中の会話が具体的で建設的になります。
オープンな雰囲気を作るために場所や時間、オンラインの場合は接続環境も整えておきましょう。
面談を実施する
面談ではまず労いと感謝の意を伝え、面談の目的(情報収集、改善点の抽出、引き継ぎ確認等)を明確にします。
その後で退職理由や業務上の課題、職場の人間関係、待遇面の不満などを傾聴し、必要に応じて深掘りする質問を行います。
相手の感情に配慮しつつ記録を取り、機密情報やプライバシーを尊重する姿勢を示すことが重要です。
面談内容を記録・共有する
面談で得た情報は公正かつ機密性を保った形で記録し、関係部署で共有します。
共有の際は個人特定につながらない形で集計・分析するか、必要最小限の関係者に限定して閲覧可能にするなど情報管理ルールを徹底します。
分析結果は改善策立案や人事戦略に反映させ、実施した改善の効果を定期的に評価するとより効果的です。
退職面談で確認したい内容
退職理由
退職理由は単一の場合だけでなく複数の要因が絡むことが多いため、具体的な事例や時期、きっかけを確認することが重要です。
キャリア志向、待遇、人間関係、業務負荷、健康問題などカテゴリ別に整理し、どの要因が決定的であったのかを深掘りします。
また本人の今後の希望や同じ状況であれば残る可能性があるかどうかについても確認すると分析に役立ちます。
仕事や職場への満足度
業務内容の適性、評価制度への納得感、上司や同僚との関係、働き方の柔軟性といった観点から満足度を把握します。
具体的には日々の業務での困りごと、成長実感、フィードバックの質や頻度、職場の雰囲気について意見を求めると良いでしょう。
満足度の低いポイントは組織改善の優先順位設定に直結しますので詳細に聞くことが重要です。
会社への要望や改善点
退職者から見た会社への要望や具体的な改善案は、現場視点を反映した貴重な情報源です。
例えば研修や評価制度の改善案、上司の指導方法、働き方改革の要望など、実行可能な提案が含まれることが多いため収集と整理を行います。
実現可能性の検討や優先順位付けを行い、改善計画に落とし込むことが重要です。
退職面談で使える質問例
退職を決めた理由は何ですか
この質問は退職面談の核となる問いであり、具体的なエピソードや時期を併せて聞くことで原因の深堀が可能です。
例として「決定的だった出来事は何か」「複数要因がある場合はどれが最も大きかったか」などフォロー質問を用意しておくと効果的です。
回答が感情的になりやすい点に配慮し、非難しない姿勢で聞き出すことが重要です。
働きやすかった点・改善してほしい点は何ですか
働きやすさと改善点を同時に尋ねることで、ポジティブな側面とネガティブな側面をバランスよく把握できます。
具体的には業務配分、評価・報酬、教育体制、残業や休暇の取りやすさ、人間関係などカテゴリ別に質問することで回答が具体化します。
改善点については優先度や緊急性も併せて聞くと、実行計画策定に役立ちます。
会社に期待することはありますか
会社に期待することを聞くことで、退職者が残っていれば求めたであろう支援や制度が見えてきます。
例えばキャリア支援の充実、評価の透明性、働き方の柔軟化、福利厚生の改善など具体案を挙げてもらうとよいでしょう。
期待と実現可能性を整理して、優先的に取り組むべきテーマを抽出します。
退職面談で聞いてはいけないこと
退職を責める質問
退職を決めた本人を責めるような質問や攻め立てる態度は避けるべきです。
責める質問は相手の防衛反応を生み、本音が聞き出せなくなるだけでなくトラブルや感情的な対立を招く恐れがあります。
情報収集が目的であることを再確認し、感謝と敬意を示しながら冷静に質問する姿勢を保ちましょう。
個人を否定する発言
退職者の人格や能力を否定する発言は法的リスクやモラルの観点からも厳禁です。
面談は改善のための事実確認の場であり、個人攻撃や誹謗中傷につながる表現は避ける必要があります。
仮に業務上の問題があった場合でも、事実に基づいた丁寧なヒアリングと改善提案に焦点を当てて進めましょう。
プライバシーに踏み込み過ぎる質問
プライベート領域に過度に踏み込む質問は避けるべきであり、法令や社内ルールに抵触する恐れがあります。
家庭事情や健康状態など聞く必要がある場合は本人の同意を得たうえで配慮ある表現で行い、収集した情報は厳格に管理します。
質問内容が業務に関連するかどうか常に意識して適切な線引きを行ってください。
退職面談を成功させるポイント
話しやすい雰囲気をつくる
話しやすい雰囲気を作るために、まずは感謝と労いの言葉を述べ、面談の目的と守秘義務について明確に伝えます。
面談の場所は静かでプライバシーが保たれる場所を選び、オンラインの場合は接続や周囲の環境にも配慮します。
担当者は中立的で共感的な態度を保ち、相手の話を遮らずに聞く姿勢を徹底しましょう。
最後まで傾聴する
退職者の話を評価や判断を挟まずに最後まで傾聴することで、本音や細かな事情を引き出すことができます。
適切な相槌や要約を用いて理解を示し、必要なフォロー質問を行うとともに、感情的な表現があっても否定せずに受け止めることが重要です。
面談の終わりには話された内容を要約して確認し、退職者の同意を得て記録に残します。
改善につなげる姿勢を示す
面談で出た課題に対して企業が本気で改善する姿勢を示すことで、社内の信頼回復や残職員へのメッセージになります。
具体的には回収した意見を匿名化して集計し、改善計画を策定して実行状況を社内にフィードバックする流れを作ることが重要です。
実行に移すことで面談が形骸化せず、継続的な組織改善に繋がります。
退職面談とリテンション面談の違い
リテンション面談とは
リテンション面談とは、退職を未然に防ぐことを目的として、退職の可能性がある従業員に対して行う面談のことです。
主に早期警戒やフォローアップ、キャリア支援や待遇の調整、心理的なサポートを通じて従業員の定着を図るために実施されます。
退職面談が事後の情報収集を主目的とするのに対し、リテンション面談は改善提案や引き止めを含む能動的な介入が中心です。
実施する目的の違い
退職面談は退職決定後に原因分析や組織改善に資する情報を得ることが主目的です。
リテンション面談は退職の芽を早期に摘み、従業員が残留するための施策を検討・実行することが目的であり、待遇や職務変更、キャリア支援を提示する場になり得ます。
両者は目的とタイミングが異なるため、使い分けと連携が重要です。
使い分けのポイント
使い分けのポイントは、従業員の退職意向の有無と時期に応じて適切な面談を選ぶことです。
退職の意向が強く確定している場合は退職面談で詳細を聞き、組織改善に活かすのが合理的です。
まだ迷いや不満が残る段階であればリテンション面談を通じて対応策を提示し、残留の可能性を高めるアプローチが望ましいです。
| 項目 | 退職面談 | リテンション面談 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 退職理由の把握と組織改善 | 離職防止と従業員定着 |
| 実施タイミング | 退職申し出後から最終出勤まで | 退職兆候が見られた段階で早期に実施 |
| アプローチ | 傾聴と分析が中心 | 提案と調整による残留促進 |
企業が注意したいポイント
ハラスメントの有無を確認する
退職の背景にハラスメントがないかを慎重に確認することは企業の法的リスク管理と職場環境改善の両面で重要です。
本人が話しにくい場合は第三者窓口や外部相談ルートの案内を行い、必要ならば別途調査を実施することが求められます。
事実関係が確認された場合は迅速に是正措置を講じ、再発防止策を明確に示す必要があります。
個人情報を適切に管理する
面談で得た個人情報やセンシティブな内容は適切に取り扱い、アクセス権限の管理や保存期間の規定に従って管理する必要があります。
情報の漏洩は信頼失墜や法的問題につながるため、記録の取り扱い方法、匿名化・集計ルール、関係者以外への情報流出防止を徹底します。
また面談前に守秘義務や利用目的を本人に説明して同意を得ることが大切です。
面談内容を組織改善へ活用する
収集したデータを単に保管するだけでなく、分析して具体的な改善策に落とし込み、実行・評価のサイクルを回すことが重要です。
分析は部署別や職種別、退職理由別に行い、優先度の高い課題から改善計画を立案していきます。
改善の進捗や成果は社内にフィードバックして透明性を保ち、社員の信頼を高めることが求められます。
退職面談後に行うべきこと
退職理由を分析する
面談で得た個別の退職理由を集計・分析して傾向を把握します。
頻出する要因や部署・年次別の特徴を洗い出し、定量データと定性コメントを組み合わせて課題の優先順位を決めます。
分析結果は経営層や該当部署と共有し、具体的な改善計画を共同で策定する基礎資料とします。
人事制度や職場環境を見直す
分析結果を踏まえて評価制度、賃金体系、育成プログラム、労働時間管理などの人事制度を見直すことが重要です。
また職場のオペレーションやコミュニケーション方法、上司のマネジメント研修などハード・ソフト両面の改善を検討します。
改善案は試行的に導入して効果を測定し、必要に応じて修正を加えながら本格導入する手順が望ましいです。
再発防止策を実施する
具体的な再発防止策を立てて実行に移し、効果測定とフィードバックを継続的に行います。
例えばハラスメント対策の強化、評価制度の透明化、ワークライフバランス施策の導入、キャリアパスの明確化などが考えられます。
実施後は従業員アンケートや定期的な面談で効果を確認し、必要な追加措置を行っていきます。
まとめ
面談結果を制度改善へ反映することが重要
退職面談は単なる手続きではなく、現場の課題を発見し組織改善に結びつける貴重な機会です。
面談で得た情報を適切に分析し、具体的な改善策に落とし込み、実行と評価を継続することで離職抑止と職場の質向上が期待できます。
制度改善や風土改革に結び付けるために、面談の質向上と情報管理の徹底を図りましょう。
この記事を書いた人
- 社会保険労務士・採用定着士
- 岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員
採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。
特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。
地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。
最新の投稿
組織改革2026-10-17スラッジとは何か?人事制度・社内手続きに潜む「行動を止める障害」
労務管理2026-10-17退職面談の目的と手順 円満退職と離職防止のための面談ガイド
労務管理2026-10-15自己都合による休職は認められる?就業規則・賃金・社会保険の基本整理
組織改革2026-10-10OJTとは?実務に直結する育成手法のメリット・デメリットと進め方


















