この記事は、賞与(ボーナス)の所得税の計算方法と源泉徴収の仕組みを知りたい会社員や経理担当者を主な対象として作成しました。
賞与に対する税金がどのように仮徴収され、年末調整でどのように精算されるかを具体的な流れと基準を用いてわかりやすく解説しますので、支給明細を見て不安に思ったときや労務・経理実務で確認したいときに役立ちます。
賞与にかかる所得税の基本
賞与にも所得税は課税される
賞与は毎月の給与とは別枠の支給であっても、所得税の課税対象になります。
支給される金額は給与所得に加算される性格を持つため、所得税の計算対象となり、源泉徴収によりあらかじめ税金が差し引かれます。
税率計算は給与とは異なる方法が用いられる点に注意が必要です。
毎月給与とは計算方法が異なる
月給や日給など通常の給与と賞与では源泉徴収の計算方法が異なります。
給与は月ごとの控除後の課税所得を累進税率で計算しますが、賞与は『算出率表』を用いて概算税率を掛けて源泉徴収します。
したがって同じ支給額でも、賞与で差し引かれる税額は月給時の税額と異なる場合があります。
賞与の所得税は源泉徴収で計算する
年末調整前に仮で差し引く仕組み
賞与の所得税は、支給時点で年末調整前の仮計算として源泉徴収されます。
これは所得税の確定を年末調整で行うための前払いの位置づけであり、支給ごとに算出率を用いて概算の税額を差し引きます。
最終的な年間の税負担額は年末調整や確定申告で精算されます。
最終調整は年末調整で行われる
年間を通じて徴収した源泉税額は年末調整で最終的に精算されます。
年末調整では扶養控除や生命保険料控除など各種控除を考慮して年間の税額を再計算し、過不足がある場合は還付または追徴が発生します。
賞与時の源泉徴収はあくまで暫定的なものであることを理解しておきましょう。
計算に使う基準
前月の給与額が基準になる
賞与の源泉徴収の算出率を決める際には、原則として賞与支給の前月の給与額が基準になります。
前月給与の金額や扶養親族数により、税率表の該当欄が決まり、その算出率が賞与に対して適用されます。
前月給与がない場合や非常に少ない場合は別の扱いになりますので注意してください。
社会保険料控除後の金額を使用
賞与の課税対象額算出の際は、まず賞与額から社会保険料を差し引いた金額を基準にします。
社会保険料は標準賞与額の計算規定に従って求められ、その控除後の額に対して算出率を掛けて所得税額を算出します。
したがって社会保険料の有無や金額が税額に影響します。
扶養親族等の数が影響する
扶養人数が多いほど税額は下がる
扶養親族の人数は源泉徴収の算出率を決める重要な要素です。
扶養人数が多ければ基礎控除などの影響により算出率が低めに設定されるため、賞与から差し引かれる税額が小さくなります。
扶養の有無や人数は給与計算担当が正確に把握しておく必要があります。
前月給与時点の扶養状況を使う
賞与の源泉徴収では、原則として前月の給与支給時点での扶養親族等の状況が用いられます。
したがって賞与支給時に扶養状況が変わっていても、前月時点の情報に基づく算出率が適用されることがあるため、扶養変更は早めに手続きを行うことが望ましいです。
賞与の所得税計算の流れ
賞与額から社会保険料を差し引く
まず賞与支給額の総額から社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険など)を差し引きます。
社会保険料は標準賞与額の規定に従って千円未満を切り捨てるなどの処理があり、その後の課税ベースが確定します。
この手順を正確に行うことが税額計算の第一歩です。
前月給与と扶養人数を確認する
次に前月の給与額と扶養親族等の人数を確認し、算出率表の該当欄を特定します。
給与計算担当者は直近の給与明細や雇用保険・扶養届けの最新情報を参照し、誤りがないか確認する必要があります。
誤ったデータを使うと過大または過少徴収の原因になります。
賞与に対する源泉徴収税額表を確認
必要な前提が整ったら、国税庁が公表する『賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表』を使って該当する算出率を確認します。
この表は扶養人数や前月給与により複数の区分があり、該当する区分の算出率を賞与の課税対象額に掛けることで源泉徴収額を算出します。
最新版の使用が必須です。
源泉徴収税額表の使い方
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用
国税庁が提供する算出率表は、前月の給与額と扶養人数ごとに適用すべき算出率がまとめられています。
表は年ごとに改定されることがあるため、毎年最新の表を参照して使用してください。
実務では表の該当行を探して小数点以下の扱いにも注意しながら適用します。
該当する算出率を賞与額に掛ける
表で該当する算出率を見つけたら、社会保険料控除後の賞与金額にその率を掛けます。
掛け算の結果得られた金額が賞与に対する源泉徴収税額の目安になります。
端数処理や千円未満の切り捨てなど事務上のルールに注意して計算を進めてください。
計算式の基本形
(賞与−社会保険料)×算出率=所得税額
賞与の所得税計算の基本式は、『(賞与−社会保険料)×算出率=所得税額』です。
社会保険料は賞与に係る標準賞与額に基づき計算し、得られた課税対象額に表の算出率を掛けて税額を求めます。
この算式は源泉徴収時の仮計算に用いられます。
前月給与がない場合の扱い
算出率が高めに設定される
前月に給与支給がない場合や非常に少額で基準に該当しない場合、算出率は高めに設定されることが多いです。
これは扶養情報等の判断が困難な場合に過少徴収を防ぐための措置であり、結果的に賞与から差し引かれる税額が通常より高くなる可能性があります。
入社初回賞与は税額が多くなりやすい
入社して初めて支給される賞与では前月給与や扶養情報が正しく反映されない場合があり、仮徴収として高めの税額が差し引かれることがあります。
従業員は年末調整や確定申告で精算されるので、初回の差し引きが多くても慌てずに申告の手続きを確認してください。
前月給与が低い場合の注意
算出率が低くなり税額も低くなる
前月給与が通常より低い場合、算出率の区分が下がり、賞与に対する源泉徴収税額も相対的に低くなることがあります。
ただしその後の給与で年収合計が上がれば年末調整で不足分が発生する可能性があるため、差額が出る点に注意してください。
年末調整で不足分が精算される
賞与支給時に源泉徴収が少なかった場合でも、年末調整や確定申告で年間の税額が再計算され、不足分は追加で徴収されます。
会社が年末調整を行う場合は給与から差し引く形で精算され、個人で確定申告するケースでは税務署で手続きを行うことになります。
賞与の社会保険料との違い
社会保険料は標準賞与額で計算
賞与にかかる社会保険料は『標準賞与額』を用いて計算されます。
標準賞与額は実際の支給額の千円未満を切り捨てた額を基準とし、その額に保険料率を適用して算出されます。
社会保険料は所得税とは別の基準と率で計算されるため混同しないように注意が必要です。
所得税とは完全に別計算
社会保険料の計算は所得税の計算と方法や基準が異なります。
社会保険料は保険料率や標準賞与額のルールに従い控除を行い、所得税は控除後の課税対象額に算出率を掛けて源泉徴収されます。
両者は結果的に手取りに影響しますが計算過程は独立しています。
| 項目 | 賞与に対する所得税 | 賞与に対する社会保険料 |
|---|---|---|
| 計算の基準 | 社会保険料控除後の賞与額と算出率表 | 標準賞与額(千円未満切捨)に保険料率を適用 |
| 適用タイミング | 支給時に源泉徴収し年末調整で精算 | 支給時に控除し後の精算は別途無し |
| 影響する要素 | 前月給与・扶養人数・控除の有無 | 保険料率・標準賞与額・被保険者区分 |
よくある誤解
賞与は一律税率ではない
賞与に対する課税が一律の税率で決まると誤解されがちですが、実際には前月給与や扶養人数といった条件により算出率が変わります。
したがって支給される賞与額が同じでも、個人ごとの条件により源泉徴収額は異なります。
この点を理解していないと、税負担が不公平に感じられることがあります。
年収が確定しない段階での仮計算
賞与支給時の源泉徴収は年収が確定していない段階での仮計算であり、年間の税負担が確定するのは年末調整や確定申告の時点です。
したがって賞与時に多めに差し引かれていても、最終的には還付される場合があります。
逆に不足している場合は追加の徴収が発生します。
年末調整との関係
賞与の所得税は最終的に精算される
年末調整では年間の給与と賞与を合算して総所得額を算出し、扶養控除や各種控除を反映して最終的な税額を確定します。
賞与時に仮徴収された税額はこの最終税額と比較され、過不足があれば調整されます。
したがって賞与時の源泉徴収は暫定的な扱いです。
払い過ぎ・不足は年末調整で調整
賞与で払い過ぎた税金は年末調整で還付され、逆に不足があれば追加で徴収されます。
多くの企業では年末調整を行うことで従業員個別の手続きを簡略化していますが、個人で確定申告が必要なケースもあるため該当者は確認してください。
会社側の実務ポイント
前月給与と扶養情報の確認が必須
会社の給与計算担当者は賞与支給前に必ず前月給与の金額と従業員の扶養情報を確認してください。
これらの情報が誤っていると算出率の適用ミスや過不足徴収が発生します。
従業員からの届出処理や最新のマイナンバー・扶養情報管理を徹底することが重要です。
税額表の最新版を必ず使用する
賞与の源泉徴収には国税庁が公表する最新の算出率表を使用してください。
税制改正や年ごとの料率改定が反映されるため、古い表を使うと誤った計算になる恐れがあります。
システムでの自動更新や手動での確認ルーチンを設けることが望ましいです。
従業員からの質問が多い点
なぜ賞与の税金が高く感じるのか
賞与で差し引かれる税金が多く感じられる理由は、賞与時の源泉徴収が年間税額の前払い的に高めに見積もられるケースがあるためです。
特に前月給与がない、または扶養情報が未反映の場合は算出率が高くなりやすく、その結果手取りが少なく感じられます。
年末調整で調整される点を説明すると理解が得られやすいです。
前月給与や扶養人数が影響している
賞与の税額は前月給与と扶養親族等の数が直接影響します。
従業員からの質問には、差し引かれている理由と年末調整での精算について具体的に説明することが有効です。
扶養の届け出漏れや変更がある場合は速やかに手続きを行うよう案内してください。
- 賞与の税額が高いと感じたら年末調整での還付の可能性を説明する。
- 扶養情報や前月給与の確認を従業員にも促す。
- 初回支給や入社直後の支給は仮徴収が多くなる可能性を伝える。
結論:賞与の所得税はルール通り計算されている
一時的に多く見えても年末調整で精算される
賞与にかかる所得税は国の定める算出率表や社会保険料の扱いに従って計算されており、支給時に差し引かれる税額は原則として適正な手続きに基づく仮徴収です。
見た目上は高く感じることがあっても、年末調整や確定申告で最終的に精算されるため、年間ベースでの税負担を確認することが重要です。
この記事を書いた人
- 社会保険労務士・採用定着士
- 岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員
採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。
特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。
地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。
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