この記事は、職場で「有給を使いまくる社員」への対応に悩む管理職や人事担当者、またはチームリーダーの方に向けて書かれています。 有給休暇の取得が当たり前になった現代において、社員が有給を積極的に使うことは法律上の権利ですが、業務への影響や職場の雰囲気、トラブル防止の観点から適切なマネジメントが求められます。 本記事では、有給取得の背景や会社としての対応策、トラブル防止のためのルール作りまで、実務的なポイントをわかりやすく解説します。
有給を使い切る社員が増えている背景
近年、有給休暇を積極的に使い切る社員が増加しています。 その背景には、法改正や社会的な意識の変化、企業の働き方改革の推進などが大きく影響しています。 従来は「有給を遠慮して取らない」風潮が強かった日本ですが、今では有給取得が推奨される時代となり、社員一人ひとりが自分の権利として有給を使うことが一般的になっています。 この流れは、企業の人材確保や定着率向上にも直結しており、今後も有給取得率は高まる傾向にあるでしょう。
年次有給休暇が「義務化」されたことによる意識変化
2019年の法改正により、年5日の有給休暇取得が企業に義務付けられました。 これにより、企業側も社員に有給を取らせる責任が生じ、社員自身も「有給は当然取るもの」という意識が強まりました。 以前は「有給を取ると評価が下がるのでは」と不安に感じていた人も、法的な後ろ盾ができたことで、積極的に有給を使うようになっています。 この意識変化は、職場全体の風土にも大きな影響を与えています。
働き方改革で休暇取得が当たり前になった職場環境
働き方改革の推進により、長時間労働の是正やワークライフバランスの重視が叫ばれるようになりました。 その結果、企業は有給取得を促進する施策を導入し、社員も休暇を取りやすい雰囲気が醸成されています。 有給を使い切ることが「非常識」とされていた時代から、「使わない方が損」という考え方にシフトしつつあります。 このような職場環境の変化が、有給を積極的に使う社員の増加につながっています。
休みやすい会社ほど求人・定着率が高い傾向
有給休暇を取りやすい会社は、求職者からの人気が高く、社員の定着率も向上する傾向があります。 働きやすさを重視する人材が増えている現代において、休暇取得のしやすさは企業選びの重要なポイントです。 また、社員がしっかり休める環境は、心身の健康維持やモチベーション向上にも寄与します。 このため、企業側も積極的に有給取得を推進し、職場全体の満足度向上を図る動きが広がっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有給取得義務化 | 年5日の取得が企業に義務付けられた |
| 働き方改革 | 休暇取得が当たり前の職場環境へ |
| 企業の魅力 | 休みやすい会社ほど求人・定着率が高い |
有給を多く使う社員がいる場合の会社の対応
有給を多く使う社員がいる場合、会社としては法律を遵守しつつ、業務への影響を最小限に抑える対応が求められます。 有給取得は労働者の権利であり、正当な理由なく取得を制限することはできません。 一方で、業務が滞ることのないよう、事前申請や業務調整のルールを明確にし、全社員が納得できる運用を目指すことが重要です。 また、繁忙期・閑散期のバランスを考慮し、チーム全体で協力し合う体制づくりも欠かせません。
有給取得は法律上の権利であることを理解する
有給休暇の取得は、労働基準法で認められた労働者の権利です。 会社側が「使いすぎ」と感じても、付与された日数の範囲内であれば、取得を理由に評価を下げたり、取得自体を制限したりすることはできません。 この点を管理職や現場リーダーが正しく理解し、社員にも周知することが、トラブル防止の第一歩となります。 法律違反にならないよう、社内教育やガイドラインの整備も重要です。
- 有給取得は労働者の権利
- 取得を理由に不利益な扱いはNG
- 管理職への法知識の徹底が必要
業務調整を前提に「事前申請ルール」を徹底する
有給取得が増えると、業務の調整がより重要になります。 そのためには、事前申請のルールを明確にし、できるだけ早めに申請してもらうことが大切です。 申請期限や承認フローを定め、全社員に周知することで、急な欠勤による混乱を防げます。 また、申請時には業務の引き継ぎや代替対応についても確認し、チーム全体で協力できる体制を整えましょう。
- 事前申請の期限を設定
- 承認フローを明文化
- 業務引き継ぎの徹底
繁忙期・閑散期の取得バランスを社内で共有する
有給取得が集中すると、業務に支障が出ることもあります。 特に繁忙期は、全員が同時に休むことを避けるため、取得時期のバランスを社内で共有することが重要です。 閑散期には積極的に取得を促し、繁忙期には調整をお願いするなど、柔軟な運用が求められます。 チーム内でカレンダーを共有したり、取得状況を見える化することで、スムーズな調整が可能になります。
| 時期 | 対応策 |
|---|---|
| 繁忙期 | 取得時期の調整・時季変更権の活用 |
| 閑散期 | 積極的な取得推奨 |
問題が生じるケースと線引きのポイント
有給取得は権利ですが、業務に大きな支障が出る場合や、ルールを逸脱した取得が続く場合には、会社として対応が必要です。 どこまでが正当な取得で、どこからが問題行動なのか、線引きを明確にしておくことがトラブル防止につながります。 以下に、よくある問題ケースとそのポイントを解説します。
業務に支障があるほどの連続取得が続く場合
有給を連続して取得し、業務が回らなくなる場合は、会社としても調整を求めることができます。 特に繁忙期や重要な業務が重なる時期には、時季変更権を行使することも検討しましょう。 ただし、単なる「忙しいから」という理由だけでは認められないため、具体的な業務上の支障を明確に説明する必要があります。 社員と話し合い、双方が納得できる着地点を探ることが大切です。
- 連続取得による業務停滞
- 時季変更権の行使条件
- 具体的な業務支障の説明
急な当日申請が頻繁に発生する場合
有給の当日申請が頻繁にあると、業務調整が難しくなり、他の社員への負担が増えます。 この場合、事前申請ルールの徹底や、やむを得ない事情以外は当日申請を認めないなど、社内ルールを明確にすることが重要です。 また、当日申請が続く場合は、本人と面談し、背景や理由を確認した上で、必要に応じて指導やサポートを行いましょう。
- 当日申請の頻発は業務に悪影響
- ルールの明文化と周知
- 本人との面談・指導
有給取得と無断欠勤を混同しているケース
一部の社員が、有給申請をせずに欠勤し、後から有給扱いにしてほしいと申し出るケースがあります。 これは無断欠勤に該当し、正当な有給取得とは認められません。 このような場合は、就業規則に基づき厳正に対応し、無断欠勤と有給取得の違いを明確に説明することが必要です。 再発防止のためにも、ルールの再周知や指導を徹底しましょう。
| ケース | 対応策 |
|---|---|
| 無断欠勤後の有給申請 | 就業規則に基づき厳正対応 |
| 有給と欠勤の違い | 社内教育・再周知 |
会社がとれる実務的なコントロール方法
有給取得が活発な職場では、業務が属人化しない体制や、チーム単位での管理、繁忙期の調整など、実務的なコントロールが不可欠です。 ここでは、会社が実践できる具体的な方法を紹介します。
業務の属人化を避け、誰でも対応できる体制をつくる
有給取得が活発な職場では、特定の社員にしかできない業務が多いと、休暇時に業務が滞るリスクが高まります。 そのため、業務のマニュアル化や引き継ぎ体制の整備、定期的なジョブローテーションなどを導入し、誰でも対応できる体制を作ることが重要です。 これにより、急な有給取得にも柔軟に対応でき、チーム全体の生産性向上にもつながります。 属人化を防ぐことで、社員も安心して有給を取得できる環境が整います。
- 業務マニュアルの作成
- 引き継ぎ体制の整備
- ジョブローテーションの導入
チーム単位で有給取得を管理する仕組みを導入する
個人単位での有給管理だけでなく、チーム全体で取得状況を把握し、バランスよく休暇を取れるようにすることが大切です。 例えば、チームカレンダーや有給取得管理システムを活用し、誰がいつ休むのかを可視化することで、業務の調整がしやすくなります。 また、チーム内での協力体制が強化され、休みやすい雰囲気づくりにもつながります。 このような仕組みを導入することで、トラブルの未然防止が期待できます。
- チームカレンダーの活用
- 有給取得管理システムの導入
- チーム内での協力体制強化
繁忙期は「時季変更権」を適切に使う
繁忙期に多くの社員が同時に有給を取得すると、業務に大きな支障が出る場合があります。 このような場合、会社は「時季変更権」を行使し、取得時期の変更をお願いすることができます。 ただし、時季変更権の行使には正当な理由が必要であり、単なる人手不足や慣習だけでは認められません。 具体的な業務上の支障を説明し、社員と十分に話し合った上で、納得してもらうことが大切です。
| 時季変更権のポイント | 注意点 |
|---|---|
| 業務上の支障が明確な場合に行使 | 単なる人手不足では不可 |
| 社員と十分な話し合い | 納得感のある運用が必要 |
有給取得が多い社員とのコミュニケーション
有給を多く取得する社員に対しては、取得理由を詮索せず、業務への影響を中心に建設的なコミュニケーションを心がけることが重要です。 また、勤務態度や成果に問題がある場合は、有給取得とは切り離して指導する必要があります。 休みやすい環境づくりが、結果的に職場全体の生産性向上にもつながるため、前向きな対話を意識しましょう。
取得理由を詮索せず、業務影響を中心に話し合う
有給取得の理由は原則として問わないのが基本です。 社員のプライバシーを尊重しつつ、業務への影響や引き継ぎについて建設的に話し合うことが大切です。 「なぜ休むのか」ではなく、「どう業務をカバーするか」に焦点を当てることで、社員の信頼を損なわずに円滑な調整が可能となります。 この姿勢が、職場の風通しの良さにもつながります。
- 取得理由の詮索はNG
- 業務影響・引き継ぎを中心に話す
- 信頼関係の構築
勤務態度や成果に問題があれば別軸で指導する
有給取得が多いこと自体を問題視するのではなく、勤務態度や業務成果に問題がある場合は、その点を明確に切り分けて指導することが重要です。 有給取得を理由に評価を下げたり、指導したりするのは違法となる可能性があるため、注意が必要です。 業務上の課題があれば、具体的な事実に基づいてフィードバックを行い、改善を促しましょう。
- 有給取得と勤務態度は分けて考える
- 具体的な事実に基づく指導
- 違法な評価・指導に注意
休みやすい環境づくりが結果的に生産性を高める
社員が安心して有給を取得できる環境は、心身のリフレッシュやモチベーション向上につながり、結果的に生産性の向上や離職率の低下をもたらします。 有給取得を推進することで、職場全体の雰囲気も良くなり、チームワークの強化にもつながります。 会社としては、休みやすい環境づくりを積極的に進めることが、長期的な成長の鍵となります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 生産性向上 | リフレッシュによる集中力アップ |
| 離職率低下 | 働きやすさによる定着率向上 |
トラブル防止のための社内ルールづくり
有給取得に関するトラブルを未然に防ぐためには、明確な社内ルールの整備が不可欠です。 申請期限や承認フロー、チーム内での調整義務、当日申請や連続取得の扱いなど、具体的な運用ルールを就業規則やガイドラインに明記し、全社員に周知徹底しましょう。 これにより、社員も安心して有給を取得でき、会社側も公平な運用が可能となります。 以上のように、有給を使いまくる社員への対応やトラブル防止のためには、法令遵守を前提とした明確なルール作りと、現場での柔軟なマネジメントが不可欠です。 有給取得は社員の権利であり、企業にとっても働きやすい職場づくりや人材定着のための重要な要素です。 一方で、業務への影響やチームワークを損なわないためにも、事前申請や調整義務、繁忙期の対応など、実務的な運用ルールを整備し、全員が納得できる形で運用することが大切です。 本記事で紹介したポイントを参考に、貴社の職場環境改善に役立ててください。
動画で解説
この記事を書いた人
- 社会保険労務士・採用定着士
- 岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員
採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。
特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。
地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。






















