内定取り消しは違法?認められるケースと企業が負う法的リスク

この記事は、企業の人事担当者や経営者を対象に、内定取り消しのリスクや法的な側面について詳しく解説します。 内定取り消しは、企業にとって非常にデリケートな問題であり、適切な手続きを踏まないと法的なトラブルに発展する可能性があります。 この記事を通じて、内定取り消しの正しい手順や避けるべき理由について理解を深め、企業が適切に対応できるようサポートします。

Table of Contents

内定取り消しとは何か

内定通知後に企業側が採用契約を撤回する行為

内定取り消しとは、企業が内定を出した後に、その内定を撤回する行為を指します。 これは、内定通知を受けた求職者に対して、企業が採用契約を一方的に解除することを意味します。 内定取り消しは、労働契約が成立する前の段階で行われるため、企業側は慎重に判断する必要があります。 内定を受けた求職者は、企業からの正式な内定通知を受け取った時点で、一定の期待を持つことになりますが、企業がその期待を裏切ることは、求職者にとって大きな心理的負担となります。

法的には「解雇」と同等で非常に厳しい制限がある

内定取り消しは、法的には「解雇」と同等の扱いを受けます。 つまり、企業が内定を取り消す場合には、正当な理由が必要であり、無条件で行うことはできません。 労働基準法や判例に基づき、内定取り消しには厳しい制限が設けられています。 特に、内定取り消しが不当と判断された場合、企業は求職者から損害賠償を請求されるリスクがあります。 したがって、企業は内定取り消しを行う際には、法的なリスクを十分に理解し、慎重に行動する必要があります。

安易に行うと違法となり損害賠償リスクが高い

内定取り消しを安易に行うと、違法と見なされる可能性が高くなります。 特に、企業が内定を取り消す理由が不十分であったり、感情的な判断に基づいている場合、法的なトラブルに発展することがあります。 求職者が内定取り消しに対して訴訟を起こすと、企業は損害賠償を請求されるリスクが高まります。 これにより、企業の財務状況や評判にも悪影響を及ぼす可能性があるため、内定取り消しは非常に慎重に行うべきです。

内定取り消しが認められるケース

重大な経歴詐称が発覚した場合

内定取り消しが認められるケースの一つに、求職者の重大な経歴詐称が発覚した場合があります。 例えば、学歴や職歴に関する虚偽の申告があった場合、企業は内定を取り消す正当な理由と見なされることがあります。 経歴詐称は、企業にとって信頼性を損なう行為であり、採用後の業務遂行にも影響を及ぼす可能性があるため、厳格に対処する必要があります。

犯罪行為や重大な不正が判明した場合

内定取り消しが認められるもう一つのケースは、求職者が犯罪行為を行ったり、重大な不正が判明した場合です。 例えば、内定後に犯罪歴が発覚した場合や、企業の信頼を損なう行為があった場合、企業は内定を取り消すことができます。 このような場合、企業は求職者の行動が業務に与える影響を考慮し、適切な判断を下す必要があります。

業務遂行が困難なレベルの健康上の問題が確認された場合

求職者が業務遂行に支障をきたすような健康上の問題を抱えていることが確認された場合も、内定取り消しが認められることがあります。 例えば、内定後に重篤な病気が発覚し、業務に従事できない状態となった場合、企業は内定を取り消すことができます。 ただし、この場合も、企業は求職者の健康状態を慎重に確認し、適切な手続きを踏む必要があります。

会社の倒産・事業縮小など不可避の事情がある場合

内定取り消しが認められるケースとして、会社の倒産や事業縮小などの不可避の事情がある場合も含まれます。 経済的な理由や市場環境の変化により、企業が採用を継続できない状況に陥った場合、内定取り消しが正当化されることがあります。 このような場合、企業は求職者に対して誠実に事情を説明し、適切な対応を行うことが求められます。

内定取り消しが難しい理由

内定=労働契約成立と判断されるため

内定取り消しが難しい理由の一つは、内定が労働契約の成立と見なされるためです。 内定を出した時点で、企業と求職者の間には一定の契約関係が成立していると考えられます。 このため、企業が内定を取り消す場合には、正当な理由が必要であり、無条件で行うことはできません。 労働契約が成立している以上、企業は求職者に対して一定の責任を負うことになります。

解雇と同様に「客観的合理性」と「社会的相当性」が必要

内定取り消しには、解雇と同様に「客観的合理性」と「社会的相当性」が求められます。 つまり、企業が内定を取り消す理由が客観的に妥当であり、社会的にも受け入れられるものでなければなりません。 感情的な理由や一方的な判断では、内定取り消しは認められないため、企業は慎重に理由を検討する必要があります。

感情的・一方的な理由では絶対に認められない

内定取り消しが認められない理由として、感情的な判断や一方的な理由が挙げられます。 企業が求職者に対して「なんとなく不安」といった主観的な理由で内定を取り消すことは、法的に認められません。 企業は、内定取り消しを行う際には、具体的な事実や証拠に基づいた判断を行う必要があります。

企業がやってはいけない取り消し理由

会社都合の採用ミス

企業が内定を取り消す際に避けるべき理由の一つは、会社都合の採用ミスです。 例えば、企業が求職者の能力や適性を誤って評価し、その結果内定を出した場合、内定取り消しは認められません。 企業は、採用プロセスを通じて求職者の適性を正確に判断する責任があります。

企業の事情による採用計画変更

企業の事情による採用計画の変更も、内定取り消しの理由としては認められません。 例えば、経営方針の変更や予算の見直しなど、企業内部の事情で内定を取り消すことは、法的に問題となる可能性があります。 企業は、採用計画を立てる際には、現実的な状況を考慮する必要があります。

家族構成・妊娠・性別・国籍などによる取り消し

内定取り消しの理由として、家族構成や妊娠、性別、国籍などの個人的な要因を挙げることは、法的に認められません。 これらの理由で内定を取り消すことは、差別的な行為と見なされ、企業は法的な責任を問われる可能性があります。 企業は、求職者の個人的な事情に基づいて内定を取り消すことは避けるべきです。

「なんとなく不安」「雰囲気が合わない」など主観的理由

内定取り消しの理由として、「なんとなく不安」や「雰囲気が合わない」といった主観的な理由を挙げることは、法的に認められません。 企業は、内定取り消しを行う際には、具体的な事実や証拠に基づいた判断を行う必要があります。 主観的な理由で内定を取り消すことは、法的なトラブルを引き起こす可能性が高いため、注意が必要です。

内定取り消しの正しい手順

事実確認を行い、証拠をすべて記録する

内定取り消しを行う際には、まず事実確認を行い、証拠をすべて記録することが重要です。 企業は、内定取り消しの理由が正当であることを証明するために、関連する書類や証拠を収集し、整理する必要があります。 これにより、内定取り消しが法的に妥当であることを示すことができます。

本人に弁明の機会(ヒアリング)を与える

内定取り消しを行う前に、本人に弁明の機会を与えることも重要です。 求職者に対してヒアリングを行い、内定取り消しの理由について説明し、意見を聞くことで、企業はより公正な判断を下すことができます。 このプロセスは、求職者に対する配慮を示すだけでなく、法的なリスクを軽減するためにも重要です。

就業規則・労働契約書に基づいた理由の整理

内定取り消しの理由を整理する際には、就業規則や労働契約書に基づいた理由を明確にすることが求められます。 企業は、内定取り消しが正当であることを示すために、関連する規則や契約内容を確認し、それに基づいて理由を整理する必要があります。 これにより、内定取り消しが法的に妥当であることを証明することができます。

書面で正式に通知(内定取消通知書)を行う

内定取り消しを行う際には、書面で正式に通知することが重要です。 内定取消通知書を作成し、求職者に対して送付することで、内定取り消しの理由や手続きを明確に伝えることができます。 この書面は、法的な証拠としても重要な役割を果たします。

可能であれば代替案の提示(入社延期など)を検討する

内定取り消しを行う際には、可能であれば代替案の提示を検討することも重要です。 例えば、入社延期や他の職種への配属など、求職者に対して柔軟な対応を行うことで、企業の信頼性を保つことができます。 これにより、内定取り消しの影響を最小限に抑えることができるでしょう。

内定取り消しのリスク

損害賠償(逸失利益・慰謝料)を請求される可能性

内定取り消しを行った場合、企業は損害賠償を請求されるリスクがあります。 特に、求職者が内定取り消しによって逸失利益や慰謝料を請求することが考えられます。 これにより、企業は法的なトラブルに巻き込まれる可能性が高まります。 したがって、内定取り消しを行う際には、十分な理由と証拠を持って行動することが重要です。

SNS・口コミで企業のレピュテーション低下

内定取り消しが行われると、SNSや口コミを通じて企業のレピュテーションが低下する可能性があります。 求職者が内定取り消しの経験を共有することで、企業のイメージが悪化し、今後の採用活動に悪影響を及ぼすことがあります。 企業は、内定取り消しを行う際には、その影響を十分に考慮する必要があります。

ハローワーク・大学・専門学校からの紹介停止

内定取り消しが行われると、ハローワークや大学、専門学校からの紹介が停止される可能性があります。 これにより、企業は今後の採用活動において困難な状況に直面することがあります。 企業は、内定取り消しを行う際には、その影響を十分に考慮し、慎重に判断する必要があります。

採用市場で「危険な会社」と見られる

内定取り消しが多発する企業は、採用市場で「危険な会社」と見なされることがあります。 これにより、優秀な人材を確保することが難しくなり、企業の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。 企業は、内定取り消しを行う際には、その影響を十分に考慮し、慎重に判断する必要があります。

内定取り消しを避けるために企業がすべきこと

選考段階での情報収集とヒアリングを強化する

内定取り消しを避けるためには、選考段階での情報収集とヒアリングを強化することが重要です。 企業は、求職者の経歴や能力を正確に評価するために、面接や適性検査を通じて十分な情報を収集する必要があります。 これにより、内定取り消しのリスクを低減することができます。

内定前に必要書類の確認を徹底する

内定を出す前に、必要書類の確認を徹底することも重要です。 求職者が提出した書類に不備がないか、正確な情報が記載されているかを確認することで、内定取り消しのリスクを低減することができます。 企業は、内定を出す前に十分な確認を行うことが求められます。

採用計画を現実的に設定する

企業は、採用計画を現実的に設定することが重要です。 過剰な採用を行うと、内定取り消しのリスクが高まります。 企業は、必要な人材を正確に見極め、現実的な採用計画を立てることが求められます。 これにより、内定取り消しのリスクを低減することができます。

トラブル時は社労士に早期相談する

内定取り消しに関するトラブルが発生した場合、早期に社労士に相談することが重要です。 専門家のアドバイスを受けることで、法的なリスクを軽減し、適切な対応を行うことができます。 企業は、内定取り消しに関する問題が発生した際には、迅速に専門家に相談することが求められます。

まとめ

内定取り消しは最も慎重に扱うべき高リスク対応

内定取り消しは、企業にとって非常に高リスクな対応であり、最も慎重に扱うべき問題です。 法的なリスクや reputational risk を考慮し、適切な手続きを踏むことが求められます。 企業は、内定取り消しを行う際には、十分な理由と証拠を持って行動することが重要です。

適法に行えるケースはごく限られている

内定取り消しが適法に行えるケースはごく限られており、企業はその条件を十分に理解する必要があります。 法的なリスクを回避するためには、内定取り消しの理由を慎重に検討し、適切な手続きを踏むことが求められます。

判断に迷ったら社労士への相談が必須

内定取り消しに関する判断に迷った場合、社労士への相談が必須です。 専門家のアドバイスを受けることで、法的なリスクを軽減し、適切な対応を行うことができます。 企業は、内定取り消しに関する問題が発生した際には、迅速に専門家に相談することが求められます。

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この記事を書いた人

岩本浩一社会保険労務士・採用定着士
岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員

採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。

特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。

地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。