この記事は、くら寿司のキャンペーンで配布・販売される「ちいかわ」グッズについて、従業員によるメルカリ出品や転売が疑われた場合に、会社がどのように事実確認し、懲戒処分を検討すべきかを知りたい事業者・人事担当者・店舗責任者に向けた解説です。
「ちいかわ」はナガノ氏による人気作品であり、限定ノベルティやコラボグッズは需要が高く、SNS上でも転売をめぐる話題が広がりやすい傾向があります。
ただし、ネット上の投稿だけで個人の不正や処分の可否を断定することはできません。
本記事では、入手経路、就業規則、会社への損害、SNS炎上時の対応などを、社労士の労務管理の視点から一般論として整理します。
くら寿司のちいかわグッズ転売問題とは
くら寿司のような飲食チェーンでは、人気キャラクターとのコラボレーションにより、一定額の注文をした顧客へ景品を配布したり、店舗で限定商品を販売したりする企画が行われます。
ちいかわは漫画・アニメ・公式グッズなどを通じて幅広い層に支持されているため、限定品には高い需要が生じることがあります。
その一方で、従業員が勤務先で扱う景品や商品をフリマアプリへ出品したとの疑いが生じると、単なる個人売買ではなく、業務上の立場を利用したのではないかという問題に発展します。
もっとも、具体的な事案ごとに事実は異なるため、SNS上の情報だけで違法行為や懲戒対象であると決めつけない姿勢が必要です。
従業員による出品が問題視された理由
従業員による出品が問題視されるのは、商品や景品を正当に購入・取得したのか、それとも業務上管理していた物を無断で持ち出したのかが外部から判別しにくいためです。
顧客向けの配布品を従業員が確保して販売していた場合、顧客が受け取る機会を失わせ、キャンペーンの公平性を損なうおそれがあります。
さらに、出品写真に制服、店舗設備、業務用の梱包資材などが写り込めば、勤務先との関係が強く推測され、企業名を巻き込んだ批判や炎上につながりかねません。
問題の核心はメルカリを利用したこと自体ではなく、取得経緯、会社のルール、顧客や会社に及ぼした影響を総合的に確認する点にあります。
限定グッズの転売で注目されるポイント
限定グッズの転売では、販売価格の高低だけを見て判断するのではなく、誰の所有物だったか、いつ誰から入手したか、顧客への配布前だったか、反復継続していたかを確認する必要があります。
たとえば、自費で通常どおり購入した商品を不要になって売る行為と、業務中に景品を取り置きして複数回販売する行為とでは、労務上の評価が大きく異なります。
限定性が高い商品は相場が上がりやすいため、利益の有無や額も悪質性を判断する事情の一つになります。
ただし、高額で出品されているという事情のみから、持ち出しや横領があったと認定することはできません。
会社は取引画面、在庫記録、防犯カメラ、レジ記録などの客観的な資料に基づいて確認を進めるべきです。
労務の視点では何が問題になるのか
労務管理の視点では、従業員の行為が服務規律違反、業務命令違反、窃盗・横領などの財産侵害、会社の信用毀損、職場秩序の乱れに該当する可能性があるかを検討します。
ただし、懲戒処分は会社が自由に行えるものではなく、就業規則上の根拠があり、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。
特に、会社の物を無断で販売したのか、本人所有の物を勤務時間外に売っただけなのかで、評価は大きく変わります。
人事担当者は世論やSNSの反応に引きずられず、事実認定と処分判断を分けて考えることが重要です。
必要に応じて弁護士や社会保険労務士にも相談し、証拠保全と手続の適正さを確保しましょう。
従業員がグッズを転売すると何が問題になる?
従業員がちいかわグッズを転売した場合に問題となるかは、「転売」という言葉だけでは決まりません。
会社が販売する商品を自費で買った後に売却したケース、顧客配布用の景品を業務上取得したケース、在庫や廃棄予定品を持ち出したケースでは、会社が受ける損害や規則違反の程度が異なります。
また、店舗の責任者が許可していたか、従業員向けの購入制度があったか、景品の保管・廃棄ルールが明示されていたかも重要な事情です。
処分を検討する前に、物品の所有権と取得の正当性、社内ルールの周知状況、本人の説明を一つずつ確認する必要があります。
グッズを入手した方法が重要になる
最初に確認すべきなのは、出品されたグッズを従業員がどのように入手したかです。
一般の顧客と同じ条件で代金を支払い、自身の購入分として取得したのであれば、原則として私物の売却に近い評価になります。
一方で、顧客に渡すために保管していた景品、店舗在庫、返却・廃棄の手続が完了していない物を無断で取得した場合は、財産侵害や業務上の不正が問題となり得ます。
無償配布のノベルティであっても、配布前の時点では会社が管理する物品であることが通常です。
レジ通過の有無、納品数と残数、シフト、保管場所へのアクセス権限などを確認し、推測ではなく証拠により入手経路を特定することが大切です。
会社のルールに違反していなかったか
次に、就業規則、店舗マニュアル、キャンペーン運用ルール、業務連絡などに、景品や商品を従業員が取得・購入・保管・持ち帰りする際の定めがあったかを確認します。
たとえば、従業員による景品の確保を禁止していた、販売開始前の購入を禁じていた、廃棄品の持ち帰りに責任者承認を求めていた場合、明確なルール違反として指導や処分を検討しやすくなります。
反対に、ルールが曖昧で慣行として持ち帰りが見過ごされていた場合は、重い処分の相当性を慎重に判断しなければなりません。
ルールは作成するだけでは足りず、入社時説明、研修、掲示、電子マニュアルなどで従業員へ周知していたかも重要です。
会社の信用を傷つける行為だったか
人気コラボの景品がフリマアプリに大量出品され、出品者が店舗従業員ではないかと受け取られる状況になると、顧客から「本来もらえるはずの品が抜き取られたのではないか」という不信感を招くおそれがあります。
会社の信用への影響は、実際に企業名や店舗名が表示されたか、SNSでどの程度拡散されたか、問い合わせや苦情が生じたか、売上やキャンペーン運営へ支障が出たかなどから具体的に検討します。
もっとも、ネット上で批判されたという事情だけで、直ちに重い懲戒処分が正当化されるわけではありません。
本人の行為と信用低下との結び付き、故意の有無、改善可能性を丁寧に見極め、必要な範囲で対応することが求められます。
会社は従業員を懲戒処分にできる?
会社が従業員を懲戒処分にできるかは、問題となる行為があったというだけでは決まりません。
一般に、就業規則に懲戒事由と処分の種類が定められ、従業員に周知されていることが前提となります。
そのうえで、行為の内容、会社の損害、故意性、反復性、本人の反省、過去の指導歴などを踏まえ、戒告、けん責、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇といった処分のうち相当なものを選ぶ必要があります。
労働契約法上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない懲戒は無効となる可能性があります。
安易な処分は労働紛争を招くため、手続と証拠を整えたうえで判断しましょう。
就業規則に懲戒の定めがあるか確認する
懲戒処分を検討する際は、まず就業規則に懲戒の種類、対象となる行為、処分権者、手続が定められているかを確認します。
「会社の物品を私的に使用・持ち出ししたとき」「業務上横領その他不正行為をしたとき」「会社の名誉信用を害したとき」などの規定があれば、具体的な事実との当てはめを行います。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出が必要であり、さらに従業員への周知も求められます。
規定が存在しても、従業員が閲覧できない状態では問題になることがあります。
非正規雇用者にも適用される規則か、店舗独自ルールとの整合性はあるかも確認し、根拠を明確にしてから処分手続へ進むことが重要です。
行為の内容と処分の重さを考える
処分の重さは、出品が一度だけか複数回か、物品の価額、会社や顧客への実害、計画性、隠蔽行為の有無、立場や権限、過去の注意指導歴などを総合して判断します。
たとえば、私費で購入した少数のグッズを勤務時間外に売却しただけであれば、会社が関与できる範囲は限定的な場合があります。
これに対し、顧客配布用の景品を意図的に取り置きして継続的に販売し、帳簿や在庫の操作までしていたなら、重い処分を検討する事情になり得ます。
判断の目安を整理すると、次のようになります。
| 主な事情 | 軽く評価されやすい例 | 重く評価されやすい例 |
|---|---|---|
| 入手方法 | 私費で正規に購入した私物 | 在庫・景品を無断で持ち出した |
| 行為の回数 | 単発で偶発的 | 反復継続し計画性がある |
| 会社への影響 | 具体的損害が小さい | 顧客被害や大きな信用低下がある |
| 事後対応 | 事実を認め返還・謝罪する | 虚偽説明や証拠隠滅を行う |
事実確認をせず処分するのは避ける
SNS投稿や第三者からの通報を受けたとしても、会社は直ちに犯人扱いしたり、公表したりしてはいけません。
まず、出品ページの保存、商品写真、取引日時、出品者情報とされる表示、在庫記録、レジ記録、防犯カメラ映像などを適法かつ必要な範囲で確保します。
次に、本人へ面談の機会を設け、具体的な疑いの内容を示したうえで説明を聞き、弁明内容を記録します。
一方的な事情聴取や長時間の追及は、ハラスメントや自白の任意性をめぐる問題につながるため避けるべきです。
事実が確定しない段階では自宅待機を命じる場合もありますが、賃金の取扱いや必要性は個別に検討します。
証拠と本人の説明を照合し、処分理由を具体化したうえで慎重に決定することが不可欠です。
懲戒解雇までできるのか
従業員によるグッズ転売が疑われた場合でも、会社が直ちに懲戒解雇できるとは限りません。
懲戒解雇は従業員にとって最も重い処分であり、退職金の不支給や再就職への影響など、重大な不利益を伴うことがあります。
そのため、単に会社のルールに違反したという事情だけでなく、会社の財産を不正に取得したのか、被害がどの程度か、継続的・計画的な行為だったか、信頼関係を回復できない状態かを厳格に検討しなければなりません。
処分が重すぎると判断されれば、後に懲戒解雇が無効とされるリスクがあります。
まずは事実関係を確定させ、戒告や減給などを含む選択肢の中から相当な対応を選ぶことが重要です。
懲戒解雇には相応の理由が必要
懲戒解雇には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当といえるだけの事情が必要です。
たとえば、会社が管理するちいかわグッズを無断で大量に持ち出し、継続的に販売して利益を得ていたことが明確で、会社が従業員との信頼関係を維持できない場合には、重い処分を検討する余地があります。
しかし、単発の行為で、物品の扱いに関するルールが不明確だった、本人が速やかに返還・弁償した、十分な反省を示しているといった事情があれば、解雇以外の処分が相当となる可能性があります。
解雇を急ぐのではなく、処分理由、証拠、本人の弁明、過去の類似対応を整理し、必要なら専門家に確認することが安全です。
被害額や悪質性などを確認する
懲戒解雇の可否を判断する際は、物品の市場価格だけでなく、会社が実際に受けた損害や行為の悪質性を具体的に確認します。
確認すべき事項には、持ち出した数量、会社での仕入れ・販売価格、顧客へ配布できなかった数、転売利益、在庫記録の改ざん、他の従業員の関与、隠蔽や虚偽説明の有無などがあります。
人気グッズはフリマアプリ上で高値になる場合がありますが、高額出品だけを理由に悪質と断定することは適切ではありません。
反対に、少額であっても、管理担当者という立場を利用した反復行為や、組織的な不正であれば、信頼関係への影響は大きくなります。
金額と行為態様の両面を見て、客観的な資料に基づいて評価しましょう。
過去の処分事例とのバランスも考える
同じ会社で過去に似たような持ち出し、無断販売、在庫不正があった場合には、その際にどのような処分を行ったかも重要です。
過去には注意指導や減給で済ませていたのに、今回だけ十分な理由なく懲戒解雇とすると、処分の公平性や相当性を問われるおそれがあります。
もちろん、過去の対応が不適切だったからといって、今回も不正を放置すべきではありません。
ただし、処分を重くするなら、被害額、反復性、役職、隠蔽、SNSでの影響など、従来と異なる事情を説明できるようにしておく必要があります。
処分基準を明文化し、事案ごとの判断理由を記録することは、恣意的な処分を防ぎ、従業員への説明責任を果たすうえでも有効です。
メルカリへの出品は副業になる?
メルカリなどのフリマアプリへの出品が、常に副業に当たるわけではありません。
自宅にある不要品を単発で売る行為は、一般には事業としての副業とは評価されにくいでしょう。
一方で、利益を得る目的で商品を継続的に仕入れ、反復して販売する場合は、副業や事業活動に近い実態を持つことがあります。
ただし、会社が問題にできるかは、副業に該当するかだけで決まるものではありません。
勤務時間中に出品作業をした、会社の商品や情報を利用した、競業に当たる、業務へ支障が出たなどの事情があれば、服務規律違反として別途問題になる可能性があります。
不用品の売却と転売目的の販売は異なる
不用品の売却は、自分が使用しなくなった衣類、書籍、正規に購入したグッズなどを処分する行為です。
これに対して転売目的の販売は、値上がりや利益を見込んで商品を取得し、継続して再販売する点に特徴があります。
両者の区別は形式だけではなく、購入時の目的、仕入れの反復性、販売件数、利益の規模、在庫の保有状況などを総合して判断します。
会社の商品や顧客向け景品を扱う従業員の場合は、私物かどうかに加え、業務上の地位を利用して有利に入手していないかも問題になります。
また、継続的な営利販売では税務上の申告や、扱う商品によっては許認可が必要となる可能性もあります。
会社は曖昧な印象で副業認定せず、具体的な実態を確認することが大切です。
会社の副業ルールを確認する
従業員のメルカリ出品について検討する際は、就業規則や副業・兼業規程に、届出制、許可制、禁止事項が定められているかを確認します。
近年は副業・兼業を一律に禁止するのではなく、長時間労働、秘密漏えい、競業、健康への影響、本業への支障がある場合に制限する会社が増えています。
たとえば、会社の商品・景品の売買、勤務中の出品作業、会社名や制服を使った販売、取引先との私的取引を禁止する定めは、具体的で運用しやすいルールです。
従業員がルールを理解できるよう、禁止範囲、申請方法、違反時の取扱いを明確にし、定期的に周知しましょう。
規程の文言と実際の運用にずれがないかを点検することも必要です。
副業禁止だけで判断しないことが重要
就業規則に副業禁止の文言があるとしても、それだけで勤務時間外のすべての個人活動を処分できるわけではありません。
労働者の私生活は原則として尊重されるため、会社は本業への支障、会社の正当な利益への侵害、企業秩序への具体的な影響などを確認する必要があります。
自費で購入したちいかわグッズを休日に一度売却しただけのケースと、店舗の景品を確保して継続的に転売したケースを、同じ「副業」として扱うことは適切ではありません。
問題の本質が物品の無断取得や信用毀損にあるなら、副業規定だけに依存せず、服務規律や財産管理の規定も含めて検討すべきです。
個別事情に応じた判断が、紛争予防につながります。
企業が不正転売を防ぐためにできること
不正転売への対応では、問題が起きた後に処分するだけでなく、従業員が迷わず適切に行動できる仕組みを事前に整えることが重要です。
特に、ちいかわのように人気が高く、限定性のあるキャンペーンでは、景品の保管、配布、残数管理、従業員購入、廃棄の各場面で不正の疑念が生じやすくなります。
店舗任せの曖昧な運用では、従業員ごとに認識が異なり、善意の行為がトラブルになることもあります。
本部と店舗が共通して使えるルール、記録、相談窓口を整備し、キャンペーン開始前に研修を行うことが効果的です。
不正防止は従業員を一方的に疑うためではなく、顧客・従業員・会社のいずれも守るための取り組みです。
キャンペーングッズの取扱ルールを決める
キャンペーングッズについては、納品から保管、配布、返品、廃棄までの流れを定め、誰がどの時点で管理責任を負うかを明確にします。
たとえば、景品は施錠できる場所に保管する、開封担当者と残数確認者を分ける、配布数を日次で記録する、破損品や余剰品は責任者承認なしに処分しない、といった運用が考えられます。
人気企画では、配布開始前の取り置きや、従業員・知人への優先提供が疑われることもあります。
顧客への配布条件と従業員の取扱いを分けて明示し、例外を認める場合は承認者と記録方法を決めましょう。
ルールの目的を説明することで、現場の納得感を高めることも大切です。
従業員による持ち出しや購入の基準を明確にする
従業員が商品や景品を購入できるのか、購入できる場合はいつから、個数制限はあるのか、従業員割引の対象かを明確にしておく必要があります。
基準がないまま現場の判断に任せると、「自分で支払えば問題ないと思った」「責任者が口頭で許可した」という認識の食い違いが起こります。
持ち出しについても、廃棄予定品、サンプル品、破損品、返品品を含め、無断で持ち帰ってはならない物を具体的に示すことが重要です。
承認が必要な場合は、口頭だけで済ませず、申請書やチャットツールなどに記録を残す運用が望まれます。
透明性のある基準は、不正防止だけでなく、従業員が根拠のない疑いを受けることの防止にも役立ちます。
就業規則や誓約書にルールを定める
不正転売対策を継続的に行うには、就業規則の服務規律や懲戒規定に、会社の物品・景品・情報を私的に利用してはならないことを定める方法が有効です。
必要に応じて、キャンペーン運用マニュアルや個別の誓約書にも、無断持ち出し、取り置き、第三者への譲渡、転売目的での取得を禁止する旨を記載します。
ただし、規定を細かくしすぎて現場で守れない内容にすると、形骸化するおそれがあります。
違反行為の例、相談先、承認手続、違反時の調査方法をわかりやすく示し、改定時には説明会や確認テストを実施するとよいでしょう。
就業規則を変更する場合は、法的な手続や周知方法にも注意が必要です。
SNSで炎上した場合の労務対応
従業員による転売疑惑がSNSで拡散すると、企業は短時間で対応を迫られます。
しかし、炎上を早く収めたいという理由だけで、本人を即座に処分したり、未確認情報を公表したりすることは危険です。
誤認やなりすましの可能性もあるため、まずは投稿内容と社内記録を保全し、事実関係を冷静に調査します。
顧客からの問い合わせには、調査中であること、個別の従業員情報には回答できないこと、必要な対応を行う方針であることを、過不足なく伝えることが基本です。
広報、法務、人事、店舗運営の担当者が連携し、発信窓口を一本化することで、二次炎上を防ぎやすくなります。
まず本人から事実関係を確認する
SNS上の出品画面や投稿を把握したら、削除・改変される前にURL、日時、画像、コメント、閲覧数などを保存します。
その後、対象と考えられる従業員に対し、決めつけない形で面談を設定し、出品の有無、商品名、入手時期、入手経路、販売回数、売上金の状況を確認します。
面談では、本人に説明や資料提出の機会を与え、聴取内容を書面に残すことが重要です。
必要以上に私用スマートフォンの提出やアカウント開示を求めると、プライバシー上の問題が生じるおそれがあります。
調査の必要性と方法の相当性を意識し、業務上必要な範囲で証拠を集めましょう。
会社への信用低下の程度を確認する
会社への信用低下を評価する際は、単なる投稿数や感情的な批判の多さではなく、具体的な事業影響を確認します。
たとえば、店舗名や企業名が明示されたか、顧客から苦情や返金要求があったか、キャンペーンの継続に支障が出たか、取引先や版権元から照会があったかなどが判断材料になります。
従業員個人の出品と会社との結び付きが弱い場合には、会社の信用毀損を理由に重い処分を行うことが難しいケースもあります。
一方で、制服姿での出品、業務用在庫の撮影、店舗内部情報の公開などがあれば、影響はより大きく評価され得ます。
影響を具体化して記録することが、処分の相当性を検討する基礎になります。
感情的に処分を決めない
炎上時は、企業イメージを守るために厳罰を求める声が強くなりがちです。
しかし、人事処分は世論への対応手段ではなく、就業規則と客観的事実に基づいて行うべき労務上の判断です。
感情的に懲戒解雇を決めると、後に証拠不足や処分不相当を理由とする紛争、解雇無効の主張、損害賠償請求につながるおそれがあります。
調査担当者と処分決定者を可能な範囲で分け、複数人で証拠と処分案を検討する体制を作ると、判断の偏りを抑えられます。
再発防止策と対外説明も、個人への処分とは切り分けて検討することが重要です。
従業員の転売問題でよくある質問
従業員のフリマアプリ利用をめぐる相談では、「会社の商品なら即解雇できるのか」「勤務時間外なら会社は関係ないのか」「転売禁止は規則に書かなければならないのか」といった質問が多く寄せられます。
これらは一律に回答できる問題ではなく、物品の所有関係、取得方法、社内規程、会社への影響、本人の対応などを踏まえる必要があります。
特に、ちいかわなどの人気グッズは感情的な議論になりやすいため、法律上・労務上の論点を分けて整理することが大切です。
以下では、一般的な考え方を紹介します。
会社の商品を勝手に売ったら解雇できる?
会社の商品、在庫、顧客配布用の景品を無断で持ち出して売却したことが事実であれば、懲戒の対象となる可能性があります。
ただし、解雇が有効かどうかは、無断取得の態様、数量、被害額、反復性、役職、隠蔽の有無、過去の指導歴、本人の弁明などを総合して判断します。
少額・単発の事案で、管理ルールが曖昧だったにもかかわらず直ちに懲戒解雇とすることは、重すぎると評価されるおそれがあります。
反対に、計画的な持ち出しや在庫改ざんを伴い、会社との信頼関係が著しく損なわれた場合には、解雇を含む厳しい対応が検討されます。
まず証拠を確認し、本人の言い分を聞く手続を省略しないことが不可欠です。
勤務時間外のメルカリ出品でも処分できる?
勤務時間外の出品であっても、会社の物品を無断で売却した、秘密情報を掲載した、会社の信用を具体的に害した、本業に支障が出たといった事情があれば、会社が対応できる場合があります。
一方で、従業員が自分の私物を休日に売却するだけなら、会社が私生活へ過度に介入することはできません。
判断の中心は出品した時間帯ではなく、何をどのように入手して売ったのか、業務との関連性があるのか、会社に実害があるのかという点です。
副業禁止規定がある場合も、私生活上の行為を無制限に禁止できるわけではありません。
処分を考える際は、勤務時間外であることも本人に有利な事情の一つとして考慮し、全体のバランスを取る必要があります。
転売禁止を就業規則に書く必要はある?
会社が転売行為を懲戒の対象として明確に扱いたいなら、就業規則や関連規程に根拠を整備しておくことが望ましいです。
ただし、「転売禁止」という言葉だけでは対象範囲が不明確になりやすいため、会社の商品・景品・サンプル・廃棄予定品の無断取得、私的利用、第三者譲渡、販売を禁止するなど、具体的に定めるとよいでしょう。
規定がなくても、窃盗や横領に当たるような重大な行為まで会社が何も対応できないわけではありません。
しかし、軽微なケースで懲戒処分を行うには、あらかじめ周知された服務規律があるほうが適正な運用につながります。
規程作成後は、従業員に内容を周知し、現場で守れる運用へ落とし込むことが重要です。
社会保険労務士法人あいパートナーズができること
従業員によるグッズ転売、無断持ち出し、SNS投稿などの問題では、感情的な対応を避けながら、会社の秩序と従業員の権利の双方に配慮する必要があります。
社会保険労務士法人あいパートナーズでは、問題社員対応、懲戒処分、就業規則、服務規律、再発防止策について、企業の実情に合わせた労務相談を行います。
個別事案では、事実確認の進め方、聴取記録の作成、処分の相当性、社内通知の文案などを整理し、リスクを抑えた対応を支援します。
なお、刑事責任や損害賠償請求、訴訟対応など法律判断が中心となる事項は、必要に応じて弁護士との連携も検討します。
問題社員・懲戒処分に関する労務相談
問題社員への対応では、早く解決したいあまり、証拠や手続が不十分なまま処分を進めてしまうケースがあります。
社会保険労務士法人あいパートナーズでは、ヒアリングを通じて事実関係、就業規則の根拠、本人の説明、過去の対応、組織への影響を整理し、注意指導から懲戒処分までの選択肢を検討します。
事情聴取の進め方、面談時の注意点、顛末書や始末書の扱い、処分通知書の記載内容など、実務上の疑問にも対応します。
解雇ありきで進めるのではなく、行為に見合った対応か、紛争リスクを抑えられるかという視点で助言を受けることが重要です。
早期相談により、対応のぶれや二次トラブルを防ぎやすくなります。
就業規則・服務規律の整備支援
就業規則は、単に法律上必要な書類ではなく、従業員が守るべきルールと会社が対応できる範囲を明確にするための重要な基盤です。
物品の私的利用、無断持ち出し、SNS利用、副業・兼業、秘密保持、信用毀損、懲戒手続などの規定が現場実態に合っているかを定期的に見直す必要があります。
社会保険労務士法人あいパートナーズでは、飲食店、小売店、サービス業などの運用も踏まえ、過度に抽象的でも過度に細かすぎでもない規程づくりを支援します。
規程を改定した後の届出、意見聴取、周知方法、管理職研修まで一貫して整えることで、トラブル時に機能するルールを目指せます。
従業員の不正を防ぐ社内ルールづくり
不正を防ぐには、禁止規定を置くだけでなく、不正が起こりにくく、発見しやすい業務フローを作ることが必要です。
たとえば、景品・在庫の数量確認を複数人で行う、承認権限を明確にする、廃棄や持ち帰りを記録する、内部通報窓口を設ける、管理職への研修を行うといった対策があります。
従業員が疑問を感じた際に相談できる環境を作れば、ルール違反を未然に防げることがあります。
また、特定の従業員だけを厳しく監視するのではなく、誰に対しても同じ基準で運用することが、公平性と職場の信頼につながります。
企業規模や店舗数、扱う商品の特性に応じた実効性のある仕組みを整えましょう。
まとめ|従業員によるグッズ転売は事実確認をしたうえで慎重に処分を判断しよう
くら寿司のちいかわグッズのような人気コラボ商品をめぐる転売問題では、SNS上の印象や「転売」という言葉だけで従業員を処分することは適切ではありません。
会社が管理する景品や在庫を無断で取得・販売した事実があれば、服務規律違反や懲戒の問題になり得ます。
しかし、私費で正規に購入した私物の売却であれば、会社が対応できる範囲は限られます。
入手経路、社内ルール、周知状況、被害、悪質性、本人の弁明、過去の処分との均衡を確認し、行為に見合う対応を選ぶことが大切です。
再発防止のためには、景品管理と従業員購入のルールを明確にし、現場へ継続的に周知しましょう。
入手方法や就業規則、悪質性などを確認し、行為に見合った対応をすることが重要
従業員によるグッズ出品が発覚・疑われた際は、まず出品物が会社の物か私物か、どのような経緯で入手したかを客観的な資料で確認します。
次に、就業規則、キャンペーンマニュアル、店舗ルールに違反があるか、ルールが本人へ周知されていたかを確認します。
そのうえで、販売回数、被害額、顧客への影響、隠蔽の有無、本人の反省や返還状況などを踏まえ、注意指導から懲戒処分までの適切な対応を検討します。
懲戒解雇は例外的に慎重な判断が必要であり、炎上対策として安易に選ぶべきではありません。
公平で記録に基づく対応と、明確な再発防止ルールの整備が、企業の信用と職場秩序を守る鍵になります。
この記事を書いた人
- 社会保険労務士・採用定着士
- 岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員
採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。
特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。
地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。
最新の投稿
労務管理2026-09-06くら寿司のちいかわグッズをメルカリで売った従業員はどうなる?
労務相談2026-09-06移動時間は労働時間?通勤との違いと判断基準をわかりやすく解説
顧問契約2026-09-06初めて社労士と顧問契約を結ぶ企業のための基礎ガイド
労務管理2026-09-06限度額適用認定制度とは?入院前に必ず知っておきたい医療費軽減の仕組み


















