休職中の社会保険料はどうなる?無給でも発生する理由と企業の対応

この記事は、企業の人事担当者や経営者、および休職中の従業員を対象に、休職中の社会保険料について知っておくべきことを解説します。
特に、無給の状態でも社会保険料が発生する法的根拠や、企業がどのように対応すべきかを詳しく説明します。
休職中の社会保険料の取り扱いについて理解を深めることで、従業員と企業の双方が適切に対処できるようになります。社会保険料の未納は、企業の立替負担や退職時のトラブルにつながるため、事前準備が不可欠です。

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休職中の社会保険料はどうなるのか:在籍原則と免除例外

休職中の社会保険料については、無給であっても原則として発生することが一般的です。
これは、社会保険が労働契約の「在籍」に基づいて被保険者資格が判断されるためです。
つまり、休職中であっても、従業員は依然として会社に在籍し、被保険者資格を維持していると見なされるため、社会保険料の支払い義務が続きます。
具体的には、健康保険や厚生年金などの保険料が該当します。保険料の額は、休職前の標準報酬月額に基づいて決定されます。

休職して無給でも社会保険料は発生する

無給の状態でも、社会保険料は発生します。
これは、休職中の従業員が社会保険の被保険者である限り、保険料の支払いが必要だからです。
具体的には、以下の保険料が給与の有無に関わらず発生します。
・健康保険料
・厚生年金保険料
このため、休職中の従業員は、無給であっても社会保険料を支払う必要があります。ただし、雇用保険料は賃金を基礎とするため、無給の場合は発生しません。

社会保険は「在籍」で判断されるため免除されない

社会保険料は、従業員が会社に在籍し、被保険者資格を喪失していない限り、自動的に免除されることはありません。
休職中であっても、従業員は依然として会社の一員であり、将来的な保険給付(医療や年金)を受ける権利を維持しているため、社会保険料の支払いが求められます。
これは、企業が従業員の健康や老後の生活を支えるための公的制度であり、在籍している限りその責任と義務が続くことを意味します。

会社と従業員の負担構造と保険料算定の注意点

休職中の社会保険料に関しては、会社と従業員の双方に負担が発生します。
具体的には、会社は従業員の社会保険料の半額(折半額)を負担し、従業員も自身の負担分(本人負担分)を支払う必要があります。
このため、休職中でも両者の負担が継続することになります。

負担者負担内容負担根拠
会社社会保険料の事業主負担分(約50%)健康保険法・厚生年金保険法
従業員社会保険料の本人負担分(約50%)給与から控除される分

休職中も会社負担・本人負担の双方が発生する

休職中でも、会社と従業員の双方に社会保険料の負担が発生します。
会社は従業員の社会保険料の半額を負担し、従業員も自身の負担分を支払う必要があります。
このため、休職中でも両者の負担が続くことになります。特に、無給の状態であっても、会社負担分の社会保険料は企業の費用として毎月発生し続けるため、企業の財務状況にも影響を与えます。

給与がゼロのため本人負担分は別途徴収が必要になる

休職中に給与が支給されない場合、労働基準法上の賃金からの控除ができないため、従業員の本人負担分の社会保険料は別途徴収される必要があります。
これは、会社が保険者(年金事務所や健康保険組合)に保険料全額を納付する義務を負っているからです。
具体的には、会社が従業員に対して、社会保険料の本人負担分を請求することになります。
これにより、従業員は休職中でも社会保険料を支払うことが求められます。

標準報酬月額の随時改定(月額変更届)の可能性

休職開始に伴い、従業員の報酬が大幅に下がり、その変動が継続する場合(例:休職手当が標準報酬月額の2等級以上下がる場合)、標準報酬月額の随時改定(月額変更届)の手続きが必要となる可能性があります。
これにより、休職後の保険料が減額され、従業員と会社の負担が軽減される場合があります。
ただし、この手続きは休職開始後、特定の要件を満たしたタイミングでのみ可能であり、人事担当者は注意が必要です。

従業員負担分の徴収方法と労使協定の重要性

従業員の社会保険料の負担分については、いくつかの徴収方法がありますが、いずれの方法も労使間の明確な合意が前提となります。
これにより、従業員が休職中でも適切に社会保険料を支払うことができるようになります。
以下に、主な徴収方法と法的注意点を示します。

復職後の給与からまとめて控除する方法

復職後に、従業員の給与から社会保険料をまとめて控除する方法があります。
この方法では、休職中に未払いとなった社会保険料を復職後の給与から一括または分割で差し引くことができます。
ただし、賃金からの控除には労働基準法第24条の定めにより、労使協定の締結が必要となります。この協定がない場合、全額控除は違法となるリスクがあるため注意が必要です。

休職中に本人が直接振り込む方法

従業員が休職中に、社会保険料を直接振り込む方法もあります。
この場合、会社は毎月の保険料を計算し、従業員に通知するとともに、指定された会社の口座に振り込んでもらう必要があります。
これにより、会社を介さずに直接支払いを行うことができるため、未納リスクを分散し、透明性が高まります。ただし、毎月の振込手間と、滞納が発生しやすいリスクがあります。

長期休職の場合は分割や合意書作成が必要となる

長期休職の場合、社会保険料の未払い分が多額になるため、支払いについて分割払いの合意や、徴収方法、支払い期日、滞納時の取り扱いを明記した合意書の作成が必要となることがあります。
これは、従業員が一度に多額の支払いを行うことが難しい場合に、柔軟な対応を可能にするためです。

傷病手当金受給中の取り扱いと免除制度の適用外

傷病手当金を受給している場合でも、社会保険料の支払い義務は免除されません。
これは、傷病手当金が給与ではないため、保険料算定の基礎(報酬)にはなりませんが、被保険者資格は継続するためです。
従業員は、傷病手当金を受給している間も社会保険料を支払う必要があります。

傷病手当金は給与ではないため保険料は免除されない

傷病手当金は、健康保険法に基づき支給される所得補償であり、労働の対価である「給与」とは異なるため、社会保険料の免除対象にはなりません。
従業員は、傷病手当金を受給している間も、標準報酬月額に基づく社会保険料を支払う義務があります。
これにより、従業員は休職中でも社会保険の被保険者としての地位を維持し、将来の年金受給資格期間に算入されます。

「育児休業」とは異なり免除制度が適用されない

傷病手当金受給中は、育児休業とは異なり、社会保険料の免除制度が適用されません。
育児休業中は、育児介護休業法に基づき、一定の条件を満たすことで社会保険料が全額免除される特例がありますが、私傷病による休職にはそのような制度は存在しません。
従業員は、傷病手当金を受給している間も社会保険料を支払う必要があることを、企業は事前に明確に伝える必要があります。

休職期間が長期化する場合の実務上の注意点

休職期間が長期化する場合、社会保険料の取り扱いについて企業と従業員の双方に注意が必要です。
特に、従業員が支払えない場合や、会社の負担が続くことに関して、早めに相談や調整を行うことが重要です。

社員が支払えない場合は早めに相談・調整が必要

休職中の従業員が社会保険料を支払えない場合、会社が一時的に立替払いを続けることになり、未収金が増加します。
このため、会社は従業員に早めに相談し、分割払いの合意や、支払い猶予の検討など、協力して解決策を見つけることが重要です。
最終的に会社が回収できない場合、その未収金は債権となり、法的な対応が必要となる可能性もあります。

会社にも毎月の保険料負担が継続する

休職中でも、会社は従業員の社会保険料の半額を負担し続ける必要があります。
これにより、会社の財務状況にも影響を与える可能性があります。
したがって、会社は休職中の従業員の社会保険料について、適切に管理し、負担を軽減する方法(例:前述の標準報酬月額の随時改定)を検討することが求められます。

休職期間満了での退職時は未徴収分の精算が問題となる

休職期間が満了し、従業員が退職する際には、未徴収の社会保険料の精算が最も大きな問題となることがあります。
従業員が未払いの社会保険料を支払わないまま退職する場合、会社はその立替分の負担を強いられることになります。
この未徴収分の精算方法や、最終的な支払いの義務について、休職開始時に書面で明確な合意を取っておくことが、会社と従業員の間でトラブルが発生するのを防ぐために非常に重要です。

企業が整備すべきルール

企業は、休職中の社会保険料の徴収方法や滞納時の対応方針を明確にする必要があります。
これにより、従業員が休職中でも適切に社会保険料を支払うことができるようになり、企業の労務リスクを最小限に抑えることができます。
以下に、企業が整備すべきルールを示します。

休職中の社会保険料徴収方法の明確化と労使協定

企業は、休職中の社会保険料の徴収方法(直接振込か復職後控除か)を明確にする必要があります。
特に、復職後の給与からのまとめて控除を予定する場合、労働基準法第24条第1項ただし書きの要件を満たすよう、賃金控除に関する労使協定を締結することが求められます。
これにより、従業員は自分の負担分を適切に支払うことができ、トラブルを避けることができます。

滞納時の対応方針や回収ルールの設定

社会保険料の滞納が発生した場合の対応方針や回収ルールを設定することも重要です。
企業は、滞納が発生した際にどのように対応するかを事前に定めておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
具体的には、滞納者への通知や、分割払いの提案、最終的な債権回収手続きへの移行時期などを明確に定めます。

休職制度と併せた誓約書・就業規則の整備

休職制度と併せて、社会保険料の取り扱いに関する項目を盛り込んだ誓約書や就業規則の整備も重要です。
これにより、従業員が休職中の社会保険料について理解し、支払い義務があることを明確に認識した上で休職に入るようにします。
具体的には、休職中の社会保険料の取り扱い、支払い義務、徴収方法、滞納時の会社の対応について明記することが求められます。

まとめ:休職中の社会保険料の正しい扱い

休職中の社会保険料については、育児休業と異なり原則免除されないことを前提に、徴収方法や滞納対応の事前ルールを整えることが最も重要です。
企業と従業員が適切に対応することで、給与がない状態での未納リスクによるトラブルを未然に防ぎ、円滑な労務管理を実現することができます。
休職中の社会保険料の取り扱いについて理解を深め、適切な対策を講じることが求められます。

免除されないことを前提に事前ルールを整えることが重要

休職中の社会保険料は免除されないため、事前にルールを整えることが重要です。
これにより、従業員が休職中でも適切に社会保険料を支払うことができ、企業も立替負担や未収金のリスクを軽減することが可能になります。
適切なルールを整備し、従業員と企業が協力して問題を解決することが求められます。

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この記事を書いた人

岩本浩一社会保険労務士・採用定着士
岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員

採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。

特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。

地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。