扶養内勤務とは?136万・130万円の壁と2026年の新ルールを社労士が解説

この記事は、扶養の範囲内で働きたいと考えている方と、パート・アルバイトを雇用する企業の担当者に向けて、扶養内勤務の仕組みを整理したものです。税金の基準は2年続けて引き上げられ、2026年4月には社会保険の扶養を判定するルールも変わりました。かつての「103万円の壁」はもちろん、1年前の「123万円」も現在の基準ではありません。令和8年分、つまり2026年分から適用される内容にもとづいて解説します。

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扶養内勤務とは何か

扶養内勤務とは、税金と社会保険の両方で「扶養されている」状態を保ちながら働くことをいいます。配偶者や親の扶養に入っていれば、自分で所得税を負担せずに済んだり、健康保険料や国民年金保険料を払わずに済んだりします。子育てや介護と両立しながら働く場合に、多くの方が選ぶ働き方です。

税金の扶養と社会保険の扶養は、別の制度です

まず押さえておきたいのは、扶養という言葉が2つの異なる制度で使われていることです。ひとつは所得税や住民税の計算にかかわる税金の扶養、もうひとつは健康保険や年金にかかわる社会保険の扶養です。この2つは目的も所管する役所も違うため、判定に使う金額の基準も、判定の方法も一致しません。

年収の壁が複数あってわかりにくいのは、この2つが混ざって語られるからです。以下では税金と社会保険を分けて説明します。

税金の基準は2年続けて変わりました

長らく「103万円の壁」という言葉が使われてきましたが、この数字はすでに2回引き上げられています。令和7年度の税制改正で123万円になり、続く令和8年度の税制改正で136万円になりました。1年前に調べた内容も、すでに現行のものではないということです。

さらに2026年4月からは、社会保険の扶養を判定する方法そのものが変わりました。以前の情報をもとに勤務時間を調整すると、判断を誤る可能性があります。

税金の壁は136万円になりました

令和8年度の税制改正により、基礎控除と給与所得控除がさらに引き上げられました。この改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分、つまり2026年分の所得税から適用されます。2026年12月の年末調整で反映される内容です。

2回の改正で何が変わったのか

変わったのは控除の額です。2回の改正による推移を整理すると次のようになります。

項目改正前令和7年分令和8年分(現行)
基礎控除48万円58万円62万円
基礎控除の上乗せ後(所得489万円以下)95万円104万円
給与所得控除の最低保障額55万円65万円69万円(令和8・9年は特例で74万円)
扶養に入れる合計所得48万円以下58万円以下62万円以下
給与収入に換算すると103万円123万円136万円

基礎控除の上乗せは物価上昇への対応として設けられたもので、一部は令和8年分と令和9年分に限った特例です。恒久的な金額と時限的な金額が混在している点には注意が必要です。

136万円の壁(配偶者控除・扶養控除)

年収が136万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象になります。これが現在の「税金の扶養に入れるライン」です。かつての103万円、昨年の123万円にあたる基準だと考えてください。

178万円まで、本人に所得税はかかりません

扶養に入れるラインとは別に、本人に所得税がかかり始めるラインがあります。給与所得控除74万円と基礎控除104万円を足した178万円です。

年収136万円を超えて扶養から外れたとしても、178万円までは本人の所得税はゼロです。この2つはよく混同されますが、意味が違います。「136万円を超えたら自分に税金がかかる」というのは誤解です。

配偶者特別控除は207万円まで続きます

年収が136万円を超えても、配偶者の場合は配偶者特別控除に切り替わります。ここでよくある誤解が「136万円を超えたら控除がなくなる」というものですが、そうではありません。

配偶者の合計所得が133万円以下、給与収入でおよそ207万円までは、控除額を段階的に減らしながら適用が続きます。いきなりゼロになる仕組みではないため、136万円を少し超えた程度で世帯の税負担が急に増えることはありません。

「扶養から外れたら損」と考えて勤務時間を抑える方がいますが、税金の面だけで見れば、控除は緩やかに減るだけです。働いた分の手取りが逆転することは通常ありません。注意すべきなのは次に説明する社会保険のほうです。

19歳以上23歳未満は特定親族特別控除の対象です

大学生などの子どもを扶養している場合、令和7年度の改正で特定親族特別控除がつくられました。令和8年分では、合計所得62万円超123万円以下、給与収入でおよそ136万円超197万円以下であれば、段階的に控除が受けられます。学生アルバイトの収入が136万円を超えても、親の税負担がすぐに跳ね上がる仕組みではありません。

制度の詳細は国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」で確認できます。

社会保険の壁は130万円のままです

税金の基準が2年で2回引き上げられた一方で、社会保険の扶養に入れるかどうかの基準は130万円のまま変わっていません。ここが今回の一連の改正でもっとも誤解されやすいところです。

税金の扶養と社会保険の扶養は連動しません

年収が136万円を超えて税金の扶養から外れても、社会保険の扶養に入れるかどうかは別の判断です。逆に130万円を超えて社会保険の扶養から外れても、配偶者特別控除は207万円まで受けられます。

税金の基準が136万円まで上がったことで、現在は社会保険の130万円のほうが先に来ます。以前は税金の103万円が最初の壁でしたが、順番が入れ替わりました。「まず103万円を意識する」という従来の考え方は、もう当てはまりません。

130万円を超えると何が起きるか

年収が130万円以上になると、配偶者や親の健康保険の扶養から外れます。自分で健康保険と年金に加入し、保険料を負担することになります。税金の控除が減るのとは違い、こちらは保険料の実額が発生するため、手取りへの影響が大きくなります。

いわゆる「働き損」が起きうるのは、この130万円のラインです。年収が130万円を少し超えたところで社会保険料の負担が始まると、手取りが一時的に減ることがあります。

60歳以上や19歳以上23歳未満は基準額が違います

社会保険の扶養に入れる年収の基準は、対象者によって異なります。一般の方は130万円未満ですが、60歳以上の方や障害のある方は180万円未満、19歳以上23歳未満の子など配偶者以外の方は150万円未満が基準です。

106万円の壁と社会保険の加入要件

130万円とは別に、106万円という数字を聞いたことがある方も多いはずです。これは勤務先で社会保険に加入する条件にかかわる金額です。

106万円を超えたら加入、ではありません

よくある誤解ですが、年収が106万円を超えただけで社会保険に加入するわけではありません。加入が必要になるのは、次の要件をすべて満たした場合です。

要件内容
労働時間週の所定労働時間が20時間以上
賃金月額賃金が8.8万円以上(年収に直すとおよそ106万円)
雇用期間2か月を超えて雇用される見込みがある
学生でないこと学生は原則として対象外
企業規模従業員51人以上の企業

したがって、従業員50人以下の会社で働いている場合や、週の所定労働時間が20時間未満の場合は、月額8.8万円を超えても勤務先の社会保険には加入しません。この場合は130万円が基準になります。

賃金要件と企業規模要件は、今後なくなります

この106万円の壁は、段階的に姿を消すことが決まっています。月額8.8万円という賃金要件は、最低賃金の状況を踏まえて2025年6月から3年以内に撤廃される予定です。企業規模の要件も次のように引き下げられていきます。

時期対象となる企業規模
現在従業員51人以上
2027年10月従業員36人以上
2029年10月従業員21人以上
2032年10月従業員11人以上
2035年10月従業員10人以下も対象

最終的には、週20時間以上働いていれば企業規模にかかわらず社会保険に加入する形に近づいていきます。今は対象外の小さな会社で働いている方も、数年先には状況が変わります。

2026年4月から、扶養の判定ルールが変わりました

金額の基準とは別に、判定の方法そのものも変わりました。2026年4月1日以降、社会保険の扶養に入れるかどうかを判断する手順が新しくなっています。

労働契約の内容で判定されます

従来は、過去の収入実績や現時点の収入ペースから今後1年間の見込みを立てて判定していました。この方法だと、繁忙期にたまたま残業が増えただけで「このペースなら130万円を超える」と判断され、扶養を外れてしまうことがありました。

新しい取り扱いでは、労働条件通知書や雇用契約書に書かれた契約上の賃金をもとに、年間収入を見込みます。時給と契約上の労働時間・日数から計算した年収が基準額未満であれば、原則として扶養に該当するものとして扱われます。

繁忙期の残業で扶養を外れにくくなりました

判定の基礎が契約内容になったことで、契約に定めのない残業代は年間収入の見込みに含まれません。当初想定していなかった臨時的な収入によって結果的に年収が基準額以上になった場合でも、それが社会通念上妥当な範囲にとどまるのであれば、それだけを理由に扶養の認定を取り消す必要はないとされています。

これまで「扶養を外れたくないから繁忙期は休む」という調整をしていた方にとっては、働き方の自由度が上がる変更です。企業にとっても、人手が必要な時期にシフトを組みやすくなります。

手続きに必要な書類

この取り扱いを受けるには、労働条件通知書や雇用契約書など、時給・労働時間・日数が確認できる書類を提出します。あわせて、収入が給与のみである旨の申立てが必要です。被扶養者(異動)届の申立欄に記載するか、別途申立書を添付します。

また、労働契約を更新したときや、時給が上がった・勤務時間が増えたなど労働条件が変わったときは、その都度あらためて要件を満たしているかを確認することになります。

詳細は日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」を確認してください。

働き方の目安

実際にどのくらい働けるのかを、時給別に整理します。あくまで目安であり、賞与や通勤手当の扱いによって変わる点にはご注意ください。

時給別の月間労働時間の目安

目標年収月収の目安時給1,100円時給1,200円時給1,300円
106万円未満(社会保険の加入を避ける)約8.8万円約80時間約73時間約68時間
130万円未満(社会保険の扶養に入る)約10.8万円約98時間約90時間約83時間
136万円以下(税金の扶養に入る)約11.3万円約103時間約94時間約87時間

どのラインを目指すべきか

勤務先が従業員51人以上で、週20時間以上働く場合は、106万円が最初の分かれ目になります。それ以外の場合は106万円を気にする必要はなく、130万円が基準です。

税金の扶養は136万円まで認められるため、社会保険の130万円のほうが先に来ます。慎重に調整すべきなのは、保険料の負担が実際に発生する130万円のほうです。

最低賃金が上がると、同じシフトでも年収が増えます

見落とされやすいのが最低賃金の引き上げです。地域別最低賃金は毎年改定され、近年は上げ幅が大きくなっています。愛媛県を例にとると、令和6年10月に956円だったものが令和7年12月に1,033円となり、令和8年度はさらに1,093円が答申されました。2年で130円以上の上昇です。

時給が上がれば、勤務時間をまったく変えていなくても年収は増えます。昨年はちょうど扶養の範囲に収まっていた働き方が、今年は基準を超えるということが起こります。最低賃金は例年10月から12月にかけて改定されるため、その前後で勤務時間を見直す必要がないかを確認してください。

企業側も同じです。最低賃金の改定に合わせて時給を引き上げたことで、扶養内で働きたい従業員の年収が意図せず基準を超えてしまうことがあります。改定のタイミングでシフトの調整が必要になる従業員がいないかを、あらかじめ確認しておくと混乱を避けられます。

扶養内勤務で気をつけるポイント

複数の勤務先がある場合

掛け持ちで働いている場合、社会保険の扶養を判定する年収は、すべての勤務先の収入を合算して考えます。1か所あたりの収入が少なくても、合計が基準額を超えれば扶養から外れます。

一方で、106万円の要件のうち週20時間以上という労働時間は、原則として勤務先ごとに判定します。合算はしません。この違いも混同されやすい点です。

契約が変わったら、その都度確認が必要です

2026年4月からの新しい取り扱いは、契約内容を基礎にして判定します。裏を返せば、契約が変われば判定もやり直しになります。時給が上がった、シフトを増やした、契約を更新したというタイミングでは、扶養の要件を満たしているかを確認してください。

会社の規模で結論が変わります

同じ年収でも、勤務先が51人以上の企業か50人以下の企業かで、社会保険に加入するかどうかが変わります。転職や勤務先の規模拡大によって、これまでどおり働いていたのに扶養から外れる、ということが起こりえます。

扶養内勤務のメリットとデメリット

メリットは手取りの安定と保険料負担の回避

扶養内で働く最大の利点は、社会保険料を自分で負担せずに済むことです。健康保険は配偶者の被扶養者として給付を受けられ、国民年金についても第3号被保険者であれば保険料の納付は不要です。世帯全体で見たときの手取りが安定します。

デメリットは将来の年金と働き方の制限

一方で、厚生年金に加入しないため、将来受け取る年金額は加入した場合より少なくなります。また、収入の上限を意識して勤務時間を抑えることになるため、キャリアの選択肢が狭まる面もあります。

社会保険に加入すれば保険料の負担は生じますが、傷病手当金や出産手当金といった給付の対象になり、将来の年金も増えます。目先の手取りだけでなく、長い目で見てどちらが有利かを考える価値はあります。

よくある質問

103万円の壁はなくなったのですか

税金の扶養に入れる基準としての103万円は、令和7年分で123万円、令和8年分で136万円へと2段階で引き上げられました。ただし社会保険の130万円は変わっていないため、壁そのものがなくなったわけではありません。

178万円の壁という言葉を聞きましたが、何のことですか

本人に所得税がかかり始めるラインのことです。給与所得控除74万円と基礎控除104万円を足した金額で、令和8年分から178万円になりました。扶養に入れる136万円とは別の基準なので、混同しないよう注意してください。

年収が136万円を超えたら、すぐに税金が増えますか

本人に所得税がかかり始めるのは178万円からです。また配偶者の場合、136万円を超えても配偶者特別控除に切り替わり、207万円まで段階的に控除が受けられます。世帯の税負担が急に増えることはありません。

繁忙期に残業して130万円を超えたら、扶養から外れますか

2026年4月からの取り扱いでは、契約内容から見込まれる年収が基準額未満であり、想定外の臨時収入が社会通念上妥当な範囲であれば、それだけを理由に扶養の認定を取り消す必要はないとされています。判断は加入している健康保険の保険者が行うため、心配な場合は勤務先または保険者に確認してください。

学生アルバイトも106万円の壁の対象になりますか

学生は原則として社会保険の加入対象から除かれます。ただし卒業後も同じ勤務先で働き続ける場合など、扱いが変わることがあります。

会社側は何を準備しておくべきですか

2026年4月からの取り扱いでは、労働条件通知書や雇用契約書が扶養認定の判断材料になります。労働時間や賃金が正確に記載されているか、契約更新のたびに書面が整っているかを確認してください。書面の不備が、従業員の扶養認定に直接影響します。

まとめ

令和8年分において押さえるべき数字は、税金の扶養が136万円、社会保険の扶養が130万円、勤務先の規模によっては106万円です。本人に所得税がかかり始めるのは178万円、配偶者特別控除は207万円まで続きます。かつての103万円と150万円、1年前の123万円と160万円は、いずれも現行の基準ではありません。

そして2026年4月からは、社会保険の扶養を判定する方法が契約内容ベースに変わりました。繁忙期の残業を理由に扶養を外れる心配は、以前より小さくなっています。

制度は毎年のように変わります

税金の基準はこの2年で2回引き上げられ、社会保険の判定方法も変わりました。106万円の賃金要件と企業規模要件も、これから段階的になくなっていきます。基礎控除の上乗せには令和8年分と令和9年分に限った特例も含まれており、令和10年分以降はまた金額が変わります。

1年前に調べた内容が、そのまま使えるとは限りません。勤務時間を大きく変えるときや契約を更新するときには、その時点の基準を確認してください。判断に迷う場合は、加入している健康保険の保険者、勤務先の担当者、または社会保険労務士にご相談ください。

この記事を書いた人

岩本浩一社会保険労務士・採用定着士
岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員

採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。

特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。

地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。