雇用保険はダブルワークでも加入できる?企業が知っておくべき実務対応

この記事は、ダブルワーク(副業・兼業)をしている従業員を雇用する企業の人事・労務担当者や経営者の方に向けて書かれています。 ダブルワーク従業員の雇用保険の取り扱いは、通常の雇用と異なる点が多く、誤った対応をするとトラブルや法令違反につながるリスクもあります。 本記事では、雇用保険の基本ルールから、ダブルワーク時の実務対応、65歳以上のマルチジョブホルダー制度、社内整備のポイントまで、最新の法令・制度に基づきわかりやすく解説します。 企業が安心して副業社員を受け入れるための実務知識を身につけましょう。

ダブルワークと雇用保険の基本ルール

ダブルワークとは、1人の労働者が2つ以上の会社や事業所で同時に働くことを指します。 雇用保険は、原則として1つの事業所ごとに加入要件を満たす場合に適用されますが、ダブルワークの場合は特有のルールが存在します。 複数の勤務先で働いていても、雇用保険の加入は「主たる事業所」でのみ行われるのが基本です。 また、2022年からは65歳以上の方を対象とした「マルチジョブホルダー制度」も導入され、複数事業所での合算加入が可能になりました。 このように、ダブルワーク時の雇用保険は、年齢や勤務先ごとの条件によって大きく異なるため、正確な知識が必要です。

雇用保険の加入条件とは

雇用保険に加入するためには、主に次の2つの条件を満たす必要があります。 1つ目は、1週間の所定労働時間が20時間以上であること。 2つ目は、31日以上の雇用見込みがあることです。 これらの条件は、ダブルワークの場合でも各勤務先ごとに個別に判断されます。 また、雇用保険の適用事業所であることも前提となります。 加入条件を満たしている場合、事業主は速やかに雇用保険の手続きを行う義務があります。 条件を満たさない場合は、雇用保険の被保険者とはなりません。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある
  • 雇用保険の適用事業所である

参照:雇用保険制度(厚生労働省)

複数の勤務先で雇用保険に加入できるか

原則として、雇用保険は複数の勤務先で同時に加入することはできません。 ダブルワークの場合でも、雇用保険の被保険者となるのは「主たる事業所」のみです。 たとえば、A社とB社でそれぞれ週20時間以上働いていても、雇用保険に加入できるのは主たる事業所の一方だけとなります。 ただし、65歳以上の労働者については「マルチジョブホルダー制度」により、複数事業所での合算加入が認められるケースがあります。 この点は年齢によって大きく異なるため、注意が必要です。

年齢 複数勤務先での雇用保険加入
65歳未満 主たる事業所のみ
65歳以上 条件により合算加入可

主たる事業所の考え方

ダブルワークの場合、どちらの勤務先で雇用保険に加入するかは「主たる事業所」を基準に決定されます。 主たる事業所とは、賃金の高い方や労働時間が長い方など、労働者の生計維持にとって主要な勤務先を指します。 主たる事業所の判断基準は、原則として賃金額が高い方ですが、労働時間や本人の希望も考慮されます。 主たる事業所で加入要件を満たしていれば、そちらで雇用保険に加入し、従たる事業所では加入できません。 判断に迷う場合は、ハローワークに相談することが推奨されます。

  • 賃金額が高い勤務先
  • 労働時間が長い勤務先
  • 本人の希望も考慮

ダブルワーク従業員の雇用保険加入可否

ダブルワーク従業員が雇用保険に加入できるかどうかは、各勤務先ごとに加入要件を満たしているかがポイントとなります。 また、複数の勤務先で働いている場合でも、雇用保険の被保険者となるのは主たる事業所のみです。 勤務時間や雇用期間などの条件を満たしていない場合は、雇用保険に加入できません。 さらに、勤務先ごとの労働時間を合算しても加入できないケースがあるため、注意が必要です。 企業側は、従業員の勤務状況を正確に把握し、適切な対応を行うことが求められます。

参照:アルバイトの雇用保険加入を正しく判断するための企業向けガイド

各勤務先で個別に加入要件を満たす必要がある

ダブルワークの場合、雇用保険の加入要件は各勤務先ごとに個別に判断されます。 たとえば、A社で週25時間、B社で週10時間働いている場合、A社のみが加入要件を満たすため、A社でのみ雇用保険に加入します。 一方、どちらの勤務先も週20時間未満の場合は、どちらでも雇用保険に加入できません。 このように、勤務先ごとに要件を満たしているかを確認することが重要です。

  • 各勤務先ごとに週20時間以上か確認
  • 31日以上の雇用見込みがあるか確認
  • 主たる事業所でのみ加入

20時間未満の勤務では原則加入できない

雇用保険の加入条件の一つに「1週間の所定労働時間が20時間以上」という基準があります。 ダブルワークであっても、1つの勤務先で週20時間未満の場合は、原則として雇用保険に加入できません。 たとえば、A社で週15時間、B社で週15時間働いている場合、どちらの勤務先でも加入要件を満たさないため、雇用保険の被保険者にはなれません。 この点は、従業員本人だけでなく、企業側も十分に理解しておく必要があります。

勤務先 週の労働時間 雇用保険加入可否
A社 15時間 不可
B社 15時間 不可

合算しても加入できないケースに注意

ダブルワークの場合、複数の勤務先での労働時間を合算しても、原則として雇用保険の加入要件を満たすことはできません。 たとえば、A社で週12時間、B社で週10時間働いている場合、合計で22時間となりますが、どちらの勤務先も単独で20時間以上ではないため、雇用保険には加入できません。 ただし、65歳以上の方は「マルチジョブホルダー制度」により、合算して加入できる場合があります。 この違いをしっかり把握しておきましょう。

  • 原則、勤務先ごとに20時間以上必要
  • 合算しても加入不可(65歳未満)
  • 65歳以上は特例あり

65歳以上のマルチジョブホルダー制度とは

2022年1月から導入された「マルチジョブホルダー制度」は、65歳以上の労働者が複数の事業所で働く場合に、雇用保険の加入要件を合算して満たすことができる新しい制度です。 これにより、従来は雇用保険に加入できなかった高齢のダブルワーカーも、一定の条件を満たせば雇用保険の被保険者となることが可能になりました。 企業側は、対象となる従業員がいる場合、制度の内容や手続きについて正しく理解し、適切に対応する必要があります。

参考:マルチジョブホルダー制度(厚生労働省)

制度の概要と対象条件

マルチジョブホルダー制度は、65歳以上の労働者が2つ以上の事業所で働き、それぞれの勤務先で週5時間以上20時間未満の労働時間がある場合に、合算して週20時間以上となれば雇用保険に加入できる制度です。 ただし、両方の事業所が雇用保険の適用事業所であることが条件となります。 この制度により、65歳以上の方の雇用保険加入のハードルが下がりました。

条件 内容
年齢 65歳以上
勤務先数 2つ以上
各勤務先の労働時間 週5時間以上20時間未満
合算労働時間 週20時間以上

事業主が対応すべき手続き

マルチジョブホルダー制度の対象となる従業員がいる場合、事業主は従業員からの申出を受けて、必要な書類をハローワークに提出する必要があります。 また、雇用保険の適用事業所であることを確認し、従業員の勤務状況や労働時間を正確に把握しておくことが重要です。 手続きの流れや必要書類については、ハローワークの窓口や公式サイトで確認しましょう。

  • 従業員からの申出を受ける
  • 必要書類をハローワークに提出
  • 勤務状況・労働時間の確認

65歳未満との違いに注意

65歳未満のダブルワーク従業員は、複数の勤務先での労働時間を合算して雇用保険に加入することはできません。 一方、65歳以上はマルチジョブホルダー制度により、合算して週20時間以上となれば加入が可能です。 この違いを理解し、年齢ごとに適切な対応を行うことが重要です。 また、65歳未満の場合は主たる事業所でのみ雇用保険に加入できる点も押さえておきましょう。

年齢 合算加入の可否
65歳未満 不可
65歳以上 可(条件あり)

実務上の注意点と対応フロー

ダブルワーク従業員の雇用保険対応を正しく行うためには、実務上の注意点を押さえ、適切なフローで手続きを進めることが重要です。 特に、勤務状況や労働時間の把握、主たる事業所の判断、退職や労働条件変更時の再確認など、細かな対応が求められます。 これらを怠ると、雇用保険の未加入や誤加入、トラブルの原因となるため、企業の人事・労務担当者はしっかりとした管理体制を整えましょう。

勤務状況・時間数のヒアリングと記録

ダブルワーク従業員を雇用する際は、他の勤務先での労働時間や雇用形態についてヒアリングし、記録を残すことが大切です。 従業員本人からの申告をもとに、週の労働時間や雇用期間の見込みを確認し、雇用保険の加入要否を判断します。 また、勤務状況に変更があった場合も、速やかに再ヒアリングを行い、記録を更新することが求められます。

  • 他勤務先の労働時間・雇用形態を確認
  • 本人申告内容を記録
  • 変更時は再ヒアリング・記録更新

主たる事業所での加入判断と申請手続き

雇用保険の加入は、主たる事業所でのみ行うのが原則です。 主たる事業所の判断は、賃金額や労働時間、本人の希望などを総合的に考慮して決定します。 主たる事業所で加入要件を満たしていれば、速やかに雇用保険の資格取得手続きを行いましょう。 判断に迷う場合は、ハローワークに相談することが推奨されます。

  • 主たる事業所の判断基準を確認
  • 要件を満たせば速やかに申請
  • 不明点はハローワークへ相談

退職・労働時間の変更による再判断の必要性

ダブルワーク従業員が退職したり、労働時間が変更になった場合は、雇用保険の加入要否を再度判断する必要があります。 たとえば、従たる事業所での勤務が主たる事業所より多くなった場合、主たる事業所の変更や新たな手続きが必要となることもあります。 また、労働時間が20時間未満に減少した場合は、資格喪失手続きが必要です。 このような変化に迅速に対応できる体制を整えておきましょう。

  • 退職・労働時間変更時は再判断
  • 主たる事業所の変更も検討
  • 資格喪失・取得手続きを適切に実施

副業・兼業を許可している企業の社内整備

副業・兼業を認める企業が増える中、雇用保険の適切な対応だけでなく、社内規定や管理体制の整備も重要です。 就業規則への副業規定の明記や、雇用保険加入有無の申告ルール、労働時間や社会保険の一体的な管理など、トラブル防止のための仕組みづくりが求められます。 これらを整備することで、従業員も企業も安心して副業・兼業に取り組むことができます。

就業規則への副業規定の明記

副業・兼業を許可する場合は、就業規則に副業に関する規定を明記しましょう。 副業の範囲や申告義務、禁止事項、雇用保険や社会保険の取り扱いなどを明確に定めることで、従業員とのトラブルを未然に防ぐことができます。 また、法改正や社会情勢の変化に応じて、定期的な見直しも重要です。

  • 副業の範囲・条件を明記
  • 申告義務・禁止事項を定める
  • 定期的な規則の見直し

雇用保険加入有無の申告ルールを整備する

ダブルワーク従業員の雇用保険対応を適切に行うためには、雇用保険加入有無の申告ルールを社内で整備することが不可欠です。 入社時や副業開始時に、他勤務先での雇用保険加入状況を必ず申告させる仕組みを作りましょう。 これにより、主たる事業所の判断や手続きミスを防ぐことができます。

  • 入社時・副業開始時に申告を義務化
  • 申告内容の記録・管理
  • 虚偽申告時の対応も明記

労働時間と社会保険の一体的な管理が必要

副業・兼業従業員の労働時間や社会保険の管理は、企業にとって大きな課題です。 雇用保険だけでなく、健康保険や厚生年金保険の加入要件も確認し、全体を一体的に管理する体制を整えましょう。 特に、労働時間の合算や社会保険の適用範囲については、最新の法令やガイドラインを常にチェックすることが重要です。

  • 労働時間の正確な把握・記録
  • 社会保険の加入要件も確認
  • 法令・ガイドラインの定期的な確認

動画で解説