この記事は人事労務担当者や経営者、社内規程を担当する法務・総務担当者を主な読者に想定しています。 育児・介護休業法の最近の改正点が企業実務にどう影響するかを整理し、社内規程のどこをどのように修正すべきか、また短時間勤務制度を実務的に設計するポイントを具体的に示す実務ガイドです。 法令の要点、規程設計の注意点、運用で起きやすいトラブルとその予防策を含めて解説します。
育児・介護休業法改正が企業実務に与える影響
育児・介護休業法の改正は単なる法改正の通知に留まらず、企業の就業規則や各種運用フロー、人事評価、賃金体系、勤怠管理システムに広範な調整を迫ります。 改正の趣旨を正しく理解せずに表面的な修正にとどめると運用段階で整合性を欠き、従業員トラブルや是正指導の対象となる可能性が高まります。 企業は法改正を契機にルールと実務を同期させる必要があります。
法改正のたびに規程見直しが必要になる理由
育児・介護関連の法改正は対象者の範囲、取得手続き、意向確認義務、制度の名称や分割取得の可否など実務に直結する項目が頻繁に見直されます。 これらは単に条文を更新するだけでなく、雇用契約、就業規則、育児・介護休業規程、社内申請書、電子申請のワークフローまで整合させる必要があります。 継続的な見直し体制がないと法令遵守が後手に回るリスクが高くなります。
未対応が是正指導につながるリスク
法改正への未対応は、育児・介護休業法を担当する都道府県労働局から助言・指導・勧告を受ける対象となり得ます。勧告に従わない場合は企業名が公表されることがあります(育児・介護休業法56条・56条の2)。 特に個別周知や意向確認の義務化、取得機会の確保に関するルールは現場での手続きが不十分だと不利益取扱いの疑いを招きやすい項目です。 早期に規程と運用を更新し、証跡を残すことがリスク低減に直結します。
育児・介護休業法改正の全体像
近年の改正は、育児・介護を行う労働者の雇用継続と両立支援を目的に、取得しやすさの向上と雇用の安定化を両輪で進めるものです。 具体的には取得対象の拡大、分割取得の柔軟化、短時間勤務等の多様な措置を導入・拡充させる方向が取られています。 企業には制度の導入だけでなく、その運用に伴う手続き整備が求められます。
近年の改正が目指す方向性
改正の主な方向性は、育児や介護を理由とする離職防止、男性の育児参加促進、時間単位取得など柔軟な働き方の実現です。 これにより育児・介護期間中も従業員がキャリア継続できる環境作りを促進する意図があります。 企業としては単なる制度設置で終わらせず、利用しやすさを担保する運用設計が求められます。
企業に求められる対応レベルの変化
これまでの義務範囲に加えて、意向確認や個別周知など手続き面での義務化が進んでおり、単純な所定労働時間の調整を超えた人事制度全体の見直しが必要です。 労務管理システムの改修や管理職の教育、周知方法の多様化など運用面の対応が重要度を増しています。
法改正対応でまず確認すべき社内規定
改正対応で最初に点検すべきは、就業規則本則、育児・介護休業規程、育児短時間勤務等の個別規程、賃金規程、評価規程、休暇申請フローなどです。 見直しは単独の条文修正に留めず、相互の整合性を確認することが重要です。 規程の記載漏れや旧表現の残存がないかを洗い出すチェックリスト作成を推奨します。
就業規則本則との関係
就業規則本則は全社員に適用される基本ルールであり、育児・介護に関する特則が個別規程として分かれている場合でも、本則との矛盾がないよう整合性を保つ必要があります。 例えば所定労働時間や休暇の取り扱い、懲戒規定との関係を明確にしておかないと運用で齟齬が生じます。
育児・介護休業規程を分けて管理する意味
育児休業と介護休業で対象や取得要件、期間、手続きが異なるため、分離して詳細に定めることで運用の明確化と従業員への周知が容易になります。 分けることで更新時の影響範囲も限定化でき、改正対応の作業負荷を軽減するメリットがあります。
育児休業に関する修正ポイント
育児休業規程の見直しでは、対象となる子の年齢範囲、取得可能な期間、分割取得の可否、申請手続および提出様式、個別周知や意向確認の実務フローなどを重点的にチェックします。 加えて育児休業に伴う社会保険や雇用保険の取り扱い、復職時の措置についても明文化が必要です。
対象労働者の範囲見直し
パートタイムや有期雇用の労働者も、法律の要件を満たせば対象になります。勤続年数などで対象から外せるのは、労使協定を結んだ場合に、法律が認めている範囲に限られます。 パートタイムや有期雇用の労働者が対象になることを前提に、就業規則や雇用契約の記載をそろえる必要があります。 差別的取扱いとならないよう規程文言を明確にしておきましょう。
取得要件・取得回数の整理
育児休業の取得回数や分割取得に関する規定は、2022年10月から、育児休業を2回まで分割して取得できる形に改められ、出生後8週間以内に4週間まで取れる産後パパ育休(2回まで分割可)が別枠で設けられました。 何回まで可能か、期間の合計はどう考えるか、申請の期限や手続きはどうするかを明確に定め、管理部門が容易に運用できるプロセス設計が必要です。
産後パパ育休(出生時育児休業)への対応
産後パパ育休(出生時育児休業)は、子の出生後8週間以内に4週間(28日)まで、2回に分けて取得できる、主に男性向けの育児休業であり(育児・介護休業法9条の2)、従来の育児休業とは別枠での制度設計と周知が求められます。 企業は取得手続き、労働条件の維持、評価や昇給への影響の有無について明確な方針を規程に盛り込むべきです。
通常の育児休業との違い
通常の育児休業は原則として子が1歳未満など長期の取得を想定する一方、産後パパ育休は出生直後の短期間に特化した取得制度です。 取得期間の扱い、申請期限、分割回数、保険給付の適用範囲などで相違点があるため明確に区別した規定が必要です。
社内規程で明確に区別すべき理由
別枠で明記しておくことで、管理者や従業員が制度の違いを誤解せずに申請でき、給付や復職手続きでの混乱を避けられます。 また別規程にすることで、運用上の例外や猶予措置を個別に設定しやすくなります。 制度の存在が従業員に伝わりやすくなり、利用促進にもつながります。
育児休業取得意向確認の義務化対応
育児休業の取得意向確認の義務化は、労働者本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があったときに、育児休業に関する制度を個別に知らせ、取得の意向を確認することを事業主に義務づけるものです(育児・介護休業法21条1項。2022年4月施行)。 これにより企業は取得の機会を適切に提供した証拠を整備でき、従業員側も取得意思を表明しやすくなります。 運用では個別周知の方法と記録保持が鍵になります。
個別周知・意向確認の実務
個別周知は、面談(オンラインを含む)または書面の交付で行い、労働者が希望した場合はFAXや電子メール等でも行えます。社内ポータルへの掲示だけでは、個別周知になりません(育児・介護休業法施行規則)。確認結果は書面または電子で保存します。 意向確認は、妊娠・出産等の申出を受けたときに行うことが基本です。誰がどのタイミングで行うかを社内ルールに落とし込むことが重要です。
規程と運用を一致させる重要性
規程に「意向確認を行う」と書くだけでは不十分で、実際にいつ、どの方法で、どの部署が行うかを運用マニュアルで定め、担当者を決め、記録を年1回点検して遵守を担保する必要があります。 運用と規程の齟齬は法令違反や労働紛争の温床になります。
介護休業に関する修正ポイント
2025年4月から、介護の申出があったときの個別周知・意向確認(育児・介護休業法21条4項)、40歳に達した日の属する年度などの早めの情報提供(同条5項)、研修の実施や相談体制の整備などの雇用環境の整備(同法22条4項)が義務になっています。そのうえで、介護休業規程の見直しポイントは対象家族の範囲、介護の必要性の判断基準、介護休業の期間と分割(法定は対象家族1人につき通算93日、3回まで)、介護休暇や短時間勤務との整合性、介護に伴う賃金や社会保険の取り扱いなどです。 介護はケースバイケースが多いため柔軟性と明確な手続きの両立が求められます。
介護休業の対象家族の定義
対象家族は法律で定められています。配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母のほか、省令で祖父母、兄弟姉妹、孫が定められており、同居しているかどうかは問いません(育児・介護休業法2条4号)。 規程ではこれを下回らないように定め、おじ・おばなど法律の対象外の親族まで広げるかどうかを会社の方針として決めておくと運用が安定します。
取得日数・分割取得の考え方
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます(育児・介護休業法11条2項)。規程ではこれを下回らないように定め、法律を超えて日数や回数を増やすかどうかを決めます。 申請手続きの簡便化も規程に明記し、現場での迅速な判断を支援する運用を設計しましょう。
介護休暇・子の看護等休暇の見直し
子の看護休暇は、2025年4月1日から「子の看護等休暇」に名称が変わり、対象が小学校3年生修了までの子に広がり、取得できる理由に学級閉鎖等や入園(入学)式・卒園式が加わりました(育児・介護休業法16条の2)。あわせて、時間単位での取得や有給・無給の取り扱い、代替勤務の手配、代替要員の活用に関するルール整備が見直しポイントです。 短時間での取得ニーズが増える一方で、管理が煩雑になるため労務管理システムの対応や申請フローの簡素化が重要になります。
時間単位取得への対応
子の看護等休暇と介護休暇は、時間単位で取得できるようにしたうえで(省令)、申請期限、当日の扱い、給与計算の方法を規程に定めておく必要があります。 勤務シフトや顧客対応に影響が出る部門では事前調整ルールや代替手配ルールも合わせて整備するべきです。
無給・有給の取扱い整理
介護休暇や子の看護等休暇を有給扱いとするか無給扱いとするか、あるいは一部有給とするかなどは社内の人事制度方針に基づいて明確にし、賃金規程や給与計算ルールと連動させることが重要です。 福利厚生としての位置づけも考慮すると運用しやすくなります。
短時間勤務制度が求められる背景
短時間勤務制度は、育児や介護と仕事の両立を支援し、離職抑止や多様な人材の活用、女性や介護者のキャリア継続を図るために求められています。 3歳未満の子については法律上の義務であり、2025年10月からは3歳から小学校就学前の子についても柔軟な働き方の措置が義務になったことから、企業の人材戦略上も欠かせない制度になっています。
法定義務と努力義務の違い
法定義務は企業が必ず守らなければならないルールであり、違反すると、都道府県労働局による助言・指導・勧告の対象になります。 努力義務は、公表の対象にはなりませんが、積極的な対応が期待されます。 短時間勤務については、3歳に満たない子を養育する労働者への措置が義務です。3歳から小学校就学前の子については、短時間勤務を含む5つの措置のうち2つ以上を講じる義務があります(後述の「短時間勤務に関する法律上の義務と、2025年の改正」で説明します)。
多様な働き方への対応
短時間勤務は固定時間短縮型、フレックス併用型、曜日選択型など多様な形態が考えられます。ただし、法律が求める短時間勤務の措置は、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を必ず含みます(育児・介護休業法23条1項・23条の3第1項3号)。そのうえで、他の形態を追加の選択肢として設けます。 企業は業務特性や職種ごとの適用可否を精査し、誰がどの条件で利用できるかを明確にすることで不公平感の解消と利用促進を図る必要があります。
短時間勤務に関する法律上の義務と、2025年の改正
短時間勤務について、法律が会社に求めている義務は、子の年齢で2段階に分かれます。
3歳に満たない子を養育する労働者から申出があったときは、会社は、育児休業をしていない労働者について、原則として1日の所定労働時間を6時間とする短時間勤務の措置を講じなければなりません(育児・介護休業法23条1項)。1日の所定労働時間がもともと6時間以下の労働者は対象になりません。労使協定を結べば、継続して雇用された期間が1年に満たない労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者、業務の性質や実施体制から短時間勤務を講じることが難しい業務の労働者を、対象から外すことができます。業務が難しいことを理由に外した労働者には、短時間勤務の代わりに、育児休業に準ずる措置、在宅勤務等(テレワーク。2025年4月1日に追加)、フレックスタイム制、時差出勤、保育施設の設置運営などの措置のいずれかを講じる必要があります(同条2項)。短時間勤務の申出をしたことや、短時間勤務の措置を受けたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています(同法23条の2)。
3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者については、2025年10月1日から、会社は、次の5つの措置のうち2つ以上を講じなければなりません(同法23条の3第1項)。①始業時刻等の変更(フレックスタイム制、時差出勤)、②テレワーク等(週5日勤務の場合は月10日以上、時間単位で利用できるもの)、③短時間勤務(1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含むもの)、④養育両立支援休暇(年10日以上。原則として時間単位で取得できるもの。子の看護等休暇や年次有給休暇とは別に設けるもの)、⑤保育施設の設置運営等です。労働者は、会社が用意した措置の中から1つを選んで利用します。措置を決めるときは、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合、それがなければ労働者の過半数を代表する者の意見を聴く必要があります(同条4項)。短時間勤務は5つのうちの1つなので、短時間勤務だけを設けても、この義務を果たしたことにはなりません。継続して雇用された期間が1年に満たない労働者などは、労使協定を結べば対象から外せます(同条3項)。
2025年10月1日からは、あわせて、会社は、子が3歳になる前の省令で定める期間(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までの間)に、選んだ措置の内容と申出先などを個別に知らせ、利用する意向を確認しなければなりません(同条5項)。個別周知と意向確認は、面談(オンラインを含む)または書面の交付で行い、労働者が希望した場合はFAXや電子メール等でも行えます。社内ポータルへの掲示だけでは、個別周知になりません。また、労働者や配偶者の妊娠・出産等の申出があったときと、この意向確認のときには、勤務時間帯、勤務地、両立支援制度の利用期間などについての労働者の意向を聴き、会社は、その意向に配慮しなければなりません(同法21条2項・3項、23条の3第6項)。規程に5つの措置のうちどれを選んだかを書き、個別周知の書面と意向確認の記録の様式を用意しておくと、運用がそろいます。
2025年4月1日には、短時間勤務以外にも、規程に関わる改正が施行されています。所定外労働の制限(残業免除)の対象が、3歳未満から小学校就学前の子を養育する労働者に広がりました(同法16条の8)。子の看護等休暇と介護休暇については、労使協定で継続して雇用された期間が6か月に満たない労働者を対象から外す仕組みがなくなりました(除外できるのは、週の所定労働日数が2日以下の労働者などです。同法16条の3第2項・16条の6第2項)。協定や規程に「6か月未満」の除外が残っていないか確認する必要があります。介護では、労働者から介護が必要な状況になったと申出があったときに、制度を個別に知らせて利用の意向を確認すること(同法21条4項)、労働者が40歳に達した日の属する年度などに早めに情報を提供すること(同条5項)、研修の実施や相談体制の整備などの雇用環境を整えること(同法22条4項)が、事業主の義務になりました。雇用保険には、2歳未満の子を養育して時短勤務をする被保険者に、原則として時短勤務中に支払われた賃金の10%を支給する育児時短就業給付が創設されました。
短時間勤務制度の対象者設計
対象者の設計では育児短時間勤務、介護短時間勤務をどのように区別するか、パートや有期雇用者の適用、管理職や重要業務従事者の扱いを定めます。業務を理由に対象から外せるのは、労使協定で定めた場合に限られ、外した労働者には在宅勤務等やフレックスタイム制などの代替措置が必要です(育児・介護休業法23条1項・2項)。 運用の公平性と業務継続性のバランスをとるために、明確な基準を設けることが重要です。
育児短時間勤務の対象範囲
法律上の義務は、3歳に満たない子を養育する労働者への短時間勤務の措置です。3歳から小学校就学前の子については、5つの措置の1つとして短時間勤務を選んだ場合に講じる義務があります。選んでいない場合も、社内方針で法律の定めを超えて認めることができます。 対象に含める雇用形態や適用条件を明示し、育児休業との整合性、復職時の措置も合わせて規定します。
介護短時間勤務との整理
介護のための短時間勤務などの措置は、利用を始めた日から連続3年以上の期間について講じ、その間に2回以上利用できるようにする必要があります(育児・介護休業法23条3項)。対象になるのは、負傷・疾病・心身の障害で、2週間以上の期間にわたり常時介護が必要な状態の家族であり、介護保険の要介護認定を受けていることは条件ではありません。 申請の手続きと臨時対応のルールを整備することが必要です。
短時間勤務の勤務時間設計
勤務時間設計では1日の所定労働時間、週の所定労働日数、始業・終業時刻の調整ルール、コアタイムの設定可否などを決めます。 多様な勤務パターンを許容する場合は勤怠管理システムの対応や勤務表作成ルールも合わせて整備し、業務に支障が出ない仕組みを作る必要があります。
1日の所定労働時間の考え方
1日の所定労働時間を6時間、6.5時間、7時間などに設定する場合の基準を明確に定めます。 労働時間の短縮が賃金や社会保険にどう影響するかを説明し、従業員が選択しやすい複数パターンを用意するか、固定パターンにするかを検討します。ただし、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置は必ず含めます。
始業終業時刻のパターン設定
始業・終業時刻の柔軟化を行う場合は許容される時刻帯、シフト調整ルール、コアタイムの有無、交通費や深夜手当の計算方法などを規程で整理します。 業務上の制約がある部署向けに個別ルールを設けることも検討すべきです。
短時間勤務者の賃金設計
短時間勤務者の賃金設計では時間比例での減額、固定減額、手当設計、賞与や各種手当の按分方法などを検討します。 賃金設計は不利益取扱いとならないよう公平性を担保する必要があり、就業規則や賃金規程との整合性を保つことが求められます。
賃金減額の考え方と注意点
賃金を時間比例で減額する場合は計算方法を明確にし、労働契約や雇用条件通知書に反映します。 固定減額を採用する場合も、短縮した時間分を超えて減額すると、不利益な取扱いに当たるおそれがあります。 残業手当の基礎となる所定労働時間の扱いも慎重に設計します。
| 方式 | 概要 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 時間比例 | 勤務時間に応じて賃金を按分 | 透明で合理的 | 端数処理や社会保険基準の整備が必要 |
| 固定減額 | 短時間勤務者向けに一律の減額率を設定 | 事務負担が少ない | 短縮した時間分を超える減額は不利益な取扱いになるおそれがあり、不公平感も出る恐れ |
| 手当併用 | 基本給減を抑えて手当で調整 | 所得保障効果が高い | 財務負担が増える |
不利益取扱いにならないための基準
短時間勤務の申出や利用を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、法律で禁止されています(育児・介護休業法23条の2。3歳以上の子の5つの措置は23条の3第7項)。減給、降格、昇給停止、不利益な評価も、これに当たるおそれがあります。 評価基準や昇給方針を明文化し、短時間勤務者にも公平な昇進機会や教育研修を提供することで不利益取扱いの疑義を避けます。
短時間勤務と人事評価・昇給の関係
短時間勤務と評価の関係を放置すると、不公平感が広がり制度利用が進まなくなります。 評価制度は職務内容・成果ベースに移行し、勤務時間の短縮だけで評価を下げない仕組みを整えることが重要です。 評価項目と短時間勤務者への配慮を規程に反映させましょう。
評価制度との整合性
評価制度を職務遂行や成果に重きを置く形へと見直し、短時間勤務者でも公平に評価される基準を定めます。 目標設定の調整や仕事の割り振りの工夫、評価プロセスにおける管理職のチェック体制を整備することが必要です。
トラブルになりやすいポイント
短時間勤務と評価に関するトラブルは、評価基準が曖昧、業務量調整が不公平、管理職の理解不足、昇給・昇進での実態乖離などが原因で起きやすいです。 予防策としてルールの明文化、管理職研修、異議申立ての手続きを整備しておくことが有効です。
社内規定修正時に必ず確認すべき点
規定修正時は旧規定の残存条文、他規程との整合性、労使協定の有無、就業規則の届出状況、関連する社内システムの設定、従業員への周知計画などを必ず確認します。 チェックリストを用意し、担当者間で責任分担を明確化することが重要です。
旧規定のまま残っている条文
旧規定が残っていると運用上の齟齬や法的リスクが発生します。 条文単位で比較表を作り、どの条文をどのように修正するか、削除するかを明示した改訂差分リストを作成して承認プロセスを進めるべきです。
現場運用とのズレ
規程が現場運用と乖離していると従業員の混乱や申請漏れが生じます。 現場担当者や管理職を巻き込んだヒアリングを行い、運用フローを文書化して規程に反映することで実効性を担保します。
規程だけ作って終わらせないための工夫
規程完成後の周知計画、管理職研修、FAQの整備、現場パイロット運用を行い、担当者が記録を年1回点検して見直すことで規程運用が定着します。 単発の通知で終わらせず、継続して伝えることが重要です。
社員への周知方法
周知は書面通知だけでなくイントラネット、動画説明会、Q&Aセッション、個別説明会など多チャネルで実施します。 重要な規程変更は受領確認を取り、よくある質問を整理してFAQを整備することで問い合わせ負荷を低減できます。
管理職への理解促進
管理職は日常的に制度運用の判断を行うため、制度の趣旨、申請フロー、代替要員手配、評価の調整方法などを具体的に教育する必要があります。 ケーススタディを用いた研修や相談窓口の設置が有効です。
まとめ:育児・介護対応は規程設計が成否を分ける
育児・介護に関する対応は単なる福利厚生ではなく、雇用維持と多様な人材の活用を実現する重要な経営施策です。 適切な規程設計と運用整備があれば、制度は従業員の両立支援だけでなく企業の人材戦略上の強みとなります。
法改正対応は早めの見直しが重要
法改正は公布から施行までに準備期間がありますが、省令や指針で細部が後から示されることも多いため、改正の動向を常に確認し、早めの規程見直しと運用テストを行うことがリスク低減につながります。 労務リスクを回避するために専門家の意見を活用することも検討してください。
短時間勤務制度は設計次第で戦力になる
短時間勤務制度は設計次第で離職抑止や多様な人材の確保・活用に大きく寄与します。 賃金や評価、勤務時間設計を整合させ、公平性と運用のしやすさを両立させることで、制度は企業の戦略的資産になり得ます。
この記事は、2026年10月時点の法律に基づいています。育児・介護休業法は省令や指針で細部が定められ、改正も続いているため、実際の規程の整備では、厚生労働省と都道府県労働局の最新の案内を確認するか、社会保険労務士にご相談ください。
この記事を書いた人
- 社会保険労務士・採用定着士
- 岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員
採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。
特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。
地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。
最新の投稿
組織改革2026-10-24組織崩壊した会社は立て直せる?崩れる原因と再建の具体策
組織改革2026-10-24組織崩壊が起きている会社の特徴とは?放置すると起こる5つの深刻な問題
組織改革2026-10-23フォアキャストとは?意味・使い方・ビジネスでの活用例をわかりやすく解説
労務管理2026-10-22三交代制とは?勤務時間の仕組みとメリット・デメリット・運用ガイド


















