この記事は、傷病手当金についての誤解やリスクを経営者の視点から解説するものです。 傷病手当金は、病気やケガで働けない従業員を支援する制度ですが、企業側にはさまざまな懸念が存在します。 この記事を通じて、経営者が知っておくべきポイントや、正しい理解が企業にとってどのようなメリットをもたらすのかを詳しく説明します。
なぜ会社は傷病手当金の申請を嫌がるのか
企業が傷病手当金の申請を嫌がる理由は多岐にわたります。 まず、休職が長期化するリスクを懸念しているためです。 従業員が長期間休むことで、業務に支障をきたす可能性が高まります。 次に、欠員補充やシフト調整が難しくなるため、業務の効率が低下することも懸念されます。 さらに、働けない従業員への対応負荷が増えることも、企業にとって大きな負担となります。 最後に、制度を誤解して「会社が払う」と思っているケースも多く、これが企業の抵抗感を助長しています。
休職が長期化するリスクを懸念しているため
休職が長期化することは、企業にとって大きなリスクです。 従業員が長期間働けない場合、業務の継続性が損なわれ、他の従業員に負担がかかることになります。 特に小規模な企業では、1人の欠員が業務全体に影響を及ぼすことが多く、経営者はこのリスクを非常に重視しています。 長期の休職が続くと、業務の停滞や生産性の低下が避けられず、最終的には企業の利益にも悪影響を及ぼすことになります。
欠員補充やシフト調整が難しくなるため
従業員が傷病手当金を申請して休職する場合、欠員補充やシフト調整が難しくなることが多いです。 特に、特定のスキルを持った従業員が休むと、その業務を代替できる人材を見つけるのが難しい場合があります。 これにより、業務の流れが滞り、他の従業員に過度な負担がかかることになります。 企業は、こうした状況を避けるために、傷病手当金の申請に対して消極的になることが多いのです。
働けない従業員への対応負荷が増えるため
傷病手当金の申請が行われると、企業は働けない従業員への対応に多くのリソースを割かなければなりません。 具体的には、休職中の従業員との連絡や、復職に向けたサポートが必要になります。 これにより、管理職や人事部門の負担が増加し、他の業務に影響を及ぼすことがあります。 企業は、こうした負担を避けるために、傷病手当金の申請を嫌がる傾向があります。
制度を誤解して「会社が払う」と思っているケース
多くの企業では、傷病手当金の制度について誤解が存在します。 特に、「会社が傷病手当金を支払う」と考えている経営者が多いです。 しかし、実際には傷病手当金は健康保険から支給されるものであり、企業が直接負担するものではありません。 この誤解が、企業の抵抗感を強める要因となっています。 正しい理解を持つことが、企業にとって重要です。
傷病手当金の仕組みを正確に理解する
傷病手当金の仕組みを正確に理解することは、企業にとって非常に重要です。 まず、支給するのは会社ではなく健康保険(協会けんぽ・健保組合)であることを知っておく必要があります。 これにより、企業の金銭的負担が発生しないことが明確になります。 また、申請書類の会社記入は“確認欄”であり、支給義務ではないことも理解しておくべきです。 これらのポイントを押さえることで、企業は傷病手当金に対する理解を深めることができます。
支給するのは会社ではなく健康保険(協会けんぽ・健保組合)
傷病手当金は、健康保険に加入している被保険者が病気やケガで働けない場合に支給される手当金です。 支給元は会社ではなく、健康保険(協会けんぽや健保組合)です。 このため、企業は直接的な金銭的負担を負うことはありません。 正しい理解を持つことで、企業は傷病手当金に対する不安を軽減することができます。
会社の金銭負担は発生しない
傷病手当金の支給に関して、企業が金銭的な負担を負うことはありません。 これは、傷病手当金が健康保険から支給されるためです。 企業は、従業員が傷病手当金を申請することに対して、金銭的なリスクを負わないため、安心して制度を利用することができます。 この点を理解することが、企業にとって重要です。
申請書類の会社記入は“確認欄”であり支給義務ではない
傷病手当金の申請書類には、会社の記入が必要な部分がありますが、これはあくまで“確認欄”であり、支給義務ではありません。 企業は、従業員が申請する際に必要な情報を提供することが求められますが、支給そのものは健康保険が行います。 この誤解を解消することで、企業は傷病手当金に対する抵抗感を減少させることができます。
会社が嫌がる背景にある典型的な誤解
企業が傷病手当金に対して抱く誤解は、さまざまな要因から生じています。 特に、休職中の社会保険料の徴収方法を把握していないことや、「退職と同時に申請できない」と誤解しているケースが多いです。 また、会社が診断内容の責任を負うと考えてしまうことや、メンタル不調のケースに過度な不安を抱くことも、企業の抵抗感を助長しています。 これらの誤解を解消することが、企業にとって重要です。
休職中の社会保険料の徴収方法を把握していない
休職中の従業員に対する社会保険料の徴収方法について、企業が正確に理解していないことが多いです。 傷病手当金を受け取る場合、従業員は社会保険料を支払う必要がありますが、企業側がその負担を心配するあまり、申請を嫌がることがあります。 正しい情報を持つことで、企業は不安を軽減し、適切な対応が可能になります。
「退職と同時に申請できない」と誤解している
多くの企業では、退職と同時に傷病手当金を申請できないと誤解しています。 しかし、実際には退職後も申請が可能です。 この誤解が、企業の対応を難しくする要因となっています。 正しい理解を持つことで、企業は従業員の権利を尊重し、適切なサポートを提供できるようになります。
会社が診断内容の責任を負うと考えてしまう
傷病手当金の申請において、企業が診断内容の責任を負うと考えることも誤解の一つです。 実際には、医師が診断を行い、企業はその結果に基づいて対応するだけです。 この誤解が、企業の抵抗感を強める要因となっています。 正しい理解を持つことで、企業は安心して制度を利用できるようになります。
メンタル不調のケースに過度な不安を抱く
メンタル不調に関する傷病手当金の申請は、企業にとって特に不安要素となります。 メンタルヘルスに関する問題は、従業員のプライバシーや職場環境に影響を与えるため、企業は過度な不安を抱くことがあります。 この不安を解消するためには、正しい情報と理解が必要です。
企業側が知るべき実務ポイント
企業が傷病手当金に関して知っておくべき実務ポイントは多岐にわたります。 まず、休職規程に傷病手当金の取扱いを明記することが重要です。 また、医師の意見書と労務不能の判断軸を確認すること、休職中の連絡ルールと復職基準を整備すること、長期休職と自然退職の関係を整理しておくことも大切です。 これらのポイントを押さえることで、企業は適切な対応が可能になります。
休職規程に傷病手当金の取扱いを明記する
企業は、休職規程に傷病手当金の取扱いを明記することが重要です。 これにより、従業員が制度を理解しやすくなり、申請がスムーズに行えるようになります。 また、企業側も明確なルールを持つことで、対応が容易になります。 規程を整備することで、企業と従業員の双方にとってメリットが生まれます。
医師の意見書と労務不能の判断軸を確認する
傷病手当金の申請において、医師の意見書は重要な役割を果たします。 企業は、医師の意見書を基に労務不能の判断を行う必要があります。 これにより、適切な対応が可能となり、従業員の権利を尊重することができます。 医師との連携を強化することが、企業にとって重要です。
休職中の連絡ルールと復職基準を整備する
休職中の従業員との連絡ルールや復職基準を整備することも重要です。 これにより、従業員が安心して療養に専念できる環境を整えることができます。 また、復職基準を明確にすることで、従業員が復職しやすくなり、企業の業務も円滑に進むようになります。 整備されたルールは、企業の信頼性を高める要素ともなります。
長期休職と自然退職の関係を整理しておく
長期休職と自然退職の関係を整理しておくことも、企業にとって重要なポイントです。 長期休職が続くと、従業員が自然退職する可能性が高まります。 企業は、こうしたリスクを把握し、適切な対応を行うことで、従業員の離職を防ぐことができます。 事前に整理しておくことで、企業はより良い環境を提供できるようになります。
傷病手当金を拒否するリスク
傷病手当金の申請に対して非協力的な態度を取ることは、企業にとってさまざまなリスクを伴います。 申請に非協力だと“会社の妨害”と判断される可能性があり、労基署や健保組合への相談に繋がる恐れがあります。 また、パワハラや嫌がらせと認定されるリスクも存在し、不当な対応は企業イメージの悪化に直結します。 これらのリスクを理解し、適切な対応を行うことが重要です。
申請に非協力だと“会社の妨害”と判断される可能性
企業が傷病手当金の申請に対して非協力的な態度を取ると、労働者から“会社の妨害”と見なされる可能性があります。 これにより、労基署からの指導や監査が入ることも考えられます。 企業は、従業員の権利を尊重し、適切な対応を行うことが求められます。
労基署・健保組合への相談に繋がる恐れ
傷病手当金の申請に対して非協力的な態度を取ることで、労基署や健保組合への相談に繋がる恐れがあります。 これにより、企業は法的な問題を抱えることになり、最終的には企業の信頼性にも影響を及ぼすことになります。 適切な対応を行うことで、こうしたリスクを回避することが可能です。
パワハラ・嫌がらせと認定されるリスク
傷病手当金の申請に対して不当な対応を行うと、パワハラや嫌がらせと認定されるリスクがあります。 これにより、企業は法的な問題を抱えることになり、従業員の信頼を失うことにも繋がります。 企業は、従業員の権利を尊重し、適切な対応を行うことが求められます。
不当な対応は企業イメージ悪化に直結
不当な対応を行うことで、企業イメージが悪化することは避けられません。 従業員や顧客からの信頼を失うことになり、最終的には業績にも影響を及ぼすことがあります。 企業は、傷病手当金に対する正しい理解を持ち、適切な対応を行うことが重要です。
正しい対応を行うことで得られる企業メリット
傷病手当金に対して正しい対応を行うことで、企業にはさまざまなメリットがあります。 まず、従業員の早期回復・復職につながることが挙げられます。 また、トラブル防止や離職率の低下にも効果があります。 さらに、労務リスクの極小化とコンプライアンス強化にも寄与します。 これらのメリットを理解することで、企業は傷病手当金に対する正しい対応を行うことができます。
従業員の早期回復・復職につながる
傷病手当金に対して正しい対応を行うことで、従業員の早期回復や復職につながります。 従業員が安心して療養に専念できる環境を整えることで、早期の復職が可能となります。 これにより、企業は業務の継続性を保つことができ、全体の生産性向上にも寄与します。
トラブル防止や離職率の低下に効果
適切な対応を行うことで、トラブル防止や離職率の低下にも効果があります。 従業員が安心して働ける環境を提供することで、企業への信頼感が高まり、離職を防ぐことができます。 これにより、企業は人材の定着を図ることができ、長期的な成長に繋がります。
労務リスクの極小化とコンプライアンス強化
傷病手当金に対する正しい理解と対応は、労務リスクの極小化とコンプライアンス強化にも寄与します。 企業が法令を遵守し、従業員の権利を尊重することで、法的なトラブルを回避することができます。 これにより、企業の信頼性が向上し、持続可能な経営が実現します。
経営者が押さえておきたいポイント
経営者が傷病手当金について押さえておきたいポイントは、いくつかあります。 まず、傷病手当金は福利厚生ではなく法定給付であることを理解することが重要です。 また、“嫌がる”対応は企業にとってデメリットしかないことを認識し、専門家(社労士)と制度設計することで負担を最小化することが求められます。 これらのポイントを押さえることで、企業はより良い環境を提供できるようになります。
傷病手当金は福利厚生ではなく法定給付
傷病手当金は、企業が任意で提供する福利厚生ではなく、法定給付であることを理解することが重要です。 これは、従業員が病気やケガで働けない場合に、法律に基づいて支給される手当金です。 企業は、この制度を正しく理解し、適切に対応することが求められます。
“嫌がる”対応は企業にとってデメリットしかない
傷病手当金に対して“嫌がる”対応を行うことは、企業にとってデメリットしかありません。 従業員の権利を尊重し、適切な対応を行うことで、企業は信頼を得ることができます。 逆に、非協力的な態度を取ることで、法的なリスクや企業イメージの悪化を招くことになります。
専門家(社労士)と制度設計することで負担は最小化
傷病手当金に関する制度設計を行う際には、専門家(社労士)と連携することが重要です。 専門家の知識を活用することで、企業の負担を最小化し、適切な対応が可能になります。 これにより、企業は従業員の権利を尊重しつつ、業務の効率を保つことができます。
まとめ:傷病手当金への正しい理解が企業を守る
傷病手当金についての正しい理解は、企業にとって非常に重要です。 企業が傷病手当金に対して正しい理解を持ち、適切な対応を行うことで、従業員の権利を尊重し、業務の効率を保つことができます。 また、法的なリスクを回避し、企業イメージを守ることにも繋がります。 経営者は、傷病手当金についての知識を深め、企業の持続可能な成長を目指すことが求められます。
この記事を書いた人
- 社会保険労務士・採用定着士
- 岩本 浩一(いわもと こういち)
社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表社員
採用と定着に特化した人事労務のスペシャリスト。愛媛県社会保険労務士会所属(登録番号:3806011)。愛媛県松山市を拠点に、地元企業のみならず全国の企業の組織成長を支援している。「人手不足を解消し、持続可能な組織をつくる」ことをミッションに掲げ、理論と現場のリアリティを融合させたコンサルティングを展開。
特に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を活用した退職金制度の構築に定評がある。従業員の将来設計を支える福利厚生の整備と、経営側のコスト効率化を両立させる専門的なスキームにより、採用力の強化と離職率の低下を同時に実現。数多くの中小企業における組織課題を解決へ導いてきた。
地域経済への貢献にも注力しており、地元メディア『愛媛経済レポート』にて採用定着をテーマとした連載を長期にわたり担当。また、AI技術を活用した情報発信のパイオニアとしても活動しており、YouTubeチャンネル『あいパートナーズ AI労働解説』やPodcast『博識な猫タマとクロの資料解説』を通じて、労働法や人事トレンドの最新情報を、経営者や人事担当者に向けて分かりやすく解説している。
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